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 解説


  パートナーが非固定の理由:

   『ヴァルキリードライヴ ビクニ』という作品は、
   主に「ドライヴ」を通じて互いの気持ちを理解していく、という構造になっています。
   それ故、常にドライヴの相手が固定されているという訳ではありません。

   <重なる心、響き合う身体>というフレーズと、タイトルが示している通りです。
   これらと本作のシナリオは、そのゲームシステムに対し、完璧なまでに調和しています。

   具体的には、「Rinka」ページにおける「ヴァルキリードライヴ」項を御覧下さい。

   また、理事長(グンダリ)の思想としては、
   “ヴァルキリーはヴァルキリーの為に生きるべき”というものがあります。
   それを実感させる為に、彼女は定期戦において、
   VRクラスにおける生徒達のパートナーを意図的に変えた上で、互いに戦わせました。

   これによって、桃や乱花は他者の為にも戦うという事を知り、少しずつ変わっていきました。
   桃はそれを既に知っていたのかもしれませんが、
   大切な人を失ってからはそうした想いは封印されたままだったのでしょう。

   それと、満腹丸が買収されて戦うことが特に多かったですが、
   それはご存知の通り、食への執着が直接の理由です。そして食への執着は
   その境遇によって説明されています。つまり、幼少の頃にVR-ウイルスに感染し捕えられ、
   ビクニとは別の島に囚われていたという過去です。そこでは周囲には怖い大人しかいなかったそうです。
   ろくな教育も受けられずに彼女は戦い続けてきました。唯一楽しかったことは、食べることだけでした。
   人として他者の心の機微を読むことが不得手だったのは、そうした過去が原因です。

   物語の終盤では、食べることよりも、みんなと一緒にいる方が好きだと口にする程でした。
   倫花はこれに対して深く共感していましたが、これこそが、<今を生きる>ということです。
   満腹丸は、他者とのドライヴを通じて最も成長した人物だと言えるでしょう。
   何故なら、食べるという事はおよそ肉体的な欲求に過ぎませんが、
   他者と共に在りたいというのは精神的な欲求から生じるものと考えられる為です。
   “拠点”が食堂を兼ね、非戦区域に指定されていたのは、憩いの場であるというだけでなく、
   みんなで一緒にごはんを食べるというのが、本作における“今を生きる”という事の象徴だからです。



  倫花の行動:

   シナリオが理解出来ないという主張は、これまでにいくらか耳にしてきた事ですが
   おそらく、倫花が家に帰りたがる理由が受け容れらなかったからだと考えます。
   16才の天真爛漫な女の子ですから、論理的で明晰な思考よりも、
   感情を優先するのは自然なことだと私には思われます。

   しかしカオスルートでは特に思慮に欠ける行動が一部見られた為、
   先にそちらをプレイされた方は概ね印象が良くなかったようです。

   具体的に述べると、カオスルートでの倫花は、四神の中で眠っている先輩達の中には、
   自ら進んで時間を止める事に同意した者達がいる、という可能性を失念していました。
   カオスルートでは、本来バッドエンドに持ち込むのが自然な流れでしたが、
   ゲーム性がメインのゲームでは、ルートデザインにおける柔軟さは少ないのが一般的です。
   つまり、ADVゲームのようなエンディングを期待してはならないという事です。
   バッドルートでも一定の解決に至ってしまうのが、
   こうしたゲーム性メインのゲームにおけるシナリオの普通の在り方です。
   故に、本作のそうした点を槍玉に上げるべきではありません。

   さて、話を倫花の行いに戻しましょう。私は最初からオーダールートに入っていた為、
   彼女の行動に対し同調するのに抵抗がありませんでした。カオスルートはいくらか別として。

   物語の始まりと終わりで、“「行き当たりばったりじゃなくて、ポジティブシンキングって言ってよね」”
   と倫花が言ったように、前向きであることが希望には不可欠です。

   桃がそうしたように、愛する者達のもとへ帰ろうとする倫花の想いを
   私も叶えてあげたいと思いました。たとえそこに、どれほどの矛盾を孕んでいたとしても。

   倫花はビクニに治療の為に訪れましたが、当初その深刻さを知りませんでした。

   おそらく両親や友人との別れも済ませていないでしょう。

   私感を述べるなら、せめて一度だけでも家族に会ってから死にたいと思います。
   例えば隔離されて延命治療を受け最後に一人で逝くくらいなら、
   自宅で家族に看取られて直ぐに死ぬ方が私にとっては幸せです。
   もちろん、近い内に確実に治すことが出来るのなら病院に全てを委ねます。
   (念の為に付言しておきますが、この例えと、倫花の置かれた状況は異なります)
    
   またウイルスの感染経路は作品中では明示されていませんが、(10代の少女~20代の女性に発症とだけ)
   仮に倫花が帰ることが出来たとしても、友人や家族に迷惑が掛かるかもしれません。
   しかしウイルスを制御出来る強い精神力の持ち主ならば、感染させることも無いのかもしれません。
   Drive.16-Bにてヴァイオラは、ウイルスを完全に制御出来るようになったら島を出る気でいました。

   ウイルスに関してはまだ解らないことも多いとされています。
   アニメ版では、過去に敷島魅零が一般社会に戻されたという事がありました。
   これは、医師が彼女の処分に対する憐れみと贖罪から行ったものです。
   仮に人から人へと感染するのでしたら、この医者の倫理がそれを許さなかったことでしょう。
   つまり、明言されてはいませんが、ヒト-ヒト感染の可能性は皆無との判断が為されたという事です。
   ただし、マーメイドにおけるA-ウイルスと、ビクニにおけるVR-ウイルスおよびV-ウイルスとは厳密には異なります。


   話を戻します。いくら相手の為だとはいえ、有無を言わさずにその自由を奪うというのは認められません。
   四神と小春の行為は善意に満ちていますが、相手の同意が無い以上はお節介に過ぎません。
   しかしながら、島を解放するという倫花の行いは、他者を危険に晒すことにもなります。
   故に、他の者は倫花を止めようとする自由を必然的に有しています。
   より上位の調停者がいない以上、両者の戦争は止められません。

   <今を生きる>という倫花と、<未来に託す>という四神と小春。
   両者の想いの強さはヴァルキリードライヴの中でしか示され得ません。それは言葉より確かなものです。

   単純な勧善懲悪にしてしまうよりも、本作のように、互いに譲れない想いから生じる強い衝突こそがドラマを生み出します。



  倫花の役割:

   親、教師……大人の庇護にいつまでも甘えていては、子供は大人になることは出来ず、
   小鳥は巣から追い出されなければ永久に飛び方を学びません。
   倫花こそ、少女達を自立へと促し、自らを由とする大人へと成長させる存在です。

   しかしながら、十分に成長する前に家を出ては未来は暗いと言えるでしょう。
   それ故に精神的に独立した後も、彼女達はビクニに留まる(帰って来る)ことになります。



  未完結の様相:

   本作は未完結にも見えますが、彼女達が自立するまでを描けたのですから一定の決着は付いています。
   巷でも言われているように、掘り下げが足りなかったのは続編への布石だったのだと思われます。
   シナリオを分析していく中で、途中でその路線を変更したような箇所もいくつか見られました。


   メインシナリオライターの方は既に天国にあって、新作にて名誉挽回することはおろか、
   もはや弁明することさえままなりません。
   従って、プレイヤーは十分慎重に作品を理解する必要があると考えます。

   また、ゲーム性がメインのゲームでは、シナリオに多少の不備があったとしても
   さして問題ではないと考えます。本作はアクションゲームに長大なADVパートを
   組み合わせた作品としては傑作であると、私は結論します。





 

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