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 Drive.05 副筆頭の憂鬱


  5-A-前

   (学園廊下にて)

   乱花
    ん~~~っ!
    んんん~~~っ!
    あぁぁぁぁ、もうぅぅっ!



   倫花
    どうしたの乱花ちゃん?
    ずっと変な顔をしてるけど



   乱花
    お姉ちゃん、その言い方
    引っかかるなぁ

    そこだけ聞いたら
    私がブサイクって感じに聞こえるんだけど



   倫花
    そ、そっか

    えっと、え~っと
    どうしてそんな思い詰めたような
    表情をしてたの?



   乱花
    あー、うん
    コンゴウ先生のこと

    あそこまで追い詰めたのに
    最後の最後で勝てなかった



   倫花
    島の守護神っていうぐらいだもの
    ちょっとやそっとじゃ勝てないよ

    別に乱花ちゃんが弱いって
    いうわけじゃないと思うよ
    気にしすぎだって



   乱花
    でも勝たなきゃ
    というより勝ちたいっ!
    だって悔しいよ!

    それにお姉ちゃんと一緒なのに
    これ以上負けられないよ

    次こそは必ず……!



   桃
    調子に乗るなよ、神楽坂妹
    お前はコンゴウを倒す絶好の機会を逃したんだ



   乱花
    わあ!
    びっくりした!
    九頭竜っ!



   倫花
    あ、桃ちゃん
    おはよう



   乱花
    お姉ちゃん、なにナチュラルに
    挨拶してるわけ?

    忙しかったから忘れてたけど
    こいつはお姉ちゃんのおっぱいを
    狙ってるんだよ! 常に!

    こんな、こんなかーんじでっ!



   倫花
    ひゃっ、ひゃぁぁぁぁつ!?



   乱花
    お姉ちゃんの胸をグリングリン
    揉もうって企んでるんだよっ!
    背後には気をつけなくちゃ!



   倫花
    ふにゃぁっ!ふにゃぁぁぁっ!
    ちょ、ちょっと乱花ちゃんっ!
    朝っぱらから、そんな……っ!



   桃
    ……別にそう言う趣味はないが
    あれは武器を隠していないか
    ボディチェックをしただけだ



   乱花
    ともかくっ!
    お姉ちゃんに近づいたらぶっ倒すっ!



   桃
    朝から鬱陶しいな

    死にたくなければ
    血圧と、私への態度には気をつけた方がいい



   乱花
    こぉいぃつぅぅぅっ!



   マナ
    あらあら皆さん、
    おはようございます
    ご機嫌はいかが?



   桃
    ご機嫌だと?
    こいつのせいで最悪だ



   マナ
    桃さん
    朝からケンカはいけませんよ



   桃
    お前には関係ないだろう
    殺されたいのか



   マナ
    いいえ、関係あります
    何しろ私は副筆頭なんですから

    もう一度言いますね

    副 筆 頭!

    の、この私、猪名川マナが
    ビクニの治安を乱すようなことは許しません

    あまりうるさいことは言いたくないですけど

    あなたは副筆頭である私の
    ルームメイトでもあるんです

    びしっと気を引き締めていただかなければ



   桃
    ちっ、鬱陶しい奴が増えた



   乱花
    確かに、気を引き締める必要はあるよね

    わたしの拳も、猪名川の矢も
    コンゴウ先生には届かなかったんだし



   マナ
    うっ……
    痛いところを突きますね



   桃

    (独白開始)

    ……くだらない

    こんなぬるま湯に浸かって
    おつむまでふやけたような連中が
    私の仲間なのか?

    それとも倒すべき敵なのか?
    今度は負けられないんだ
    今度こそ私は……

    ……今度?
    今度ってなんだ?
    いったい何の話だ?

    思い出そうとすると
    頭が割れそうになる……
    私は、いったい、なにを

    (独白終了)

    ※ 戦場で誰かを失った記憶が、敗北を許さない



   マナ
    ……ということなんですよ



   乱花
    へぇぇぇ、そうだったんだ
    知らなかったなぁ



   マナ
    ですから、これまで以上に
    皆さんとの意志の疎通を密に
    しなければと思うんです

    もちろん桃さんもですよ
    話、聞いてますか?



   桃
    ……悪い
    聞いてなかった
    何の話だ?



   倫花
    学内定期戦の話だよ
    もうすぐ開かれるんだって
    私たちは初めてだよね



   桃
    ……定期戦?
    それで学園が騒がしいのか



   倫花
    五期生は全体で200人もいるから
    誰と組むかで成績が大きく左右されるんだって



   桃
    私には関係のない話だ



   乱花
    まーね
    私的にもお姉ちゃんさえいれば
    オッケーだし



   マナ
    問題は組む相手よりも
    戦う相手でしょう

    定期戦は全員参加ですから



   倫花
    小春ちゃんにヴァイオラちゃん
    満腹丸ちゃんも出てくるってことか……



   桃
    くだらないな
    私には関係ない



   マナ
    あっ、桃さん?
    どちらにいかれるんですか?



   倫花
    もうすぐホームルームが
    始まっちゃうよ?



   桃
    ホームルームに出れば
    定期戦で勝てるとでも言うのか?

     ※ ホームルームに出ないかった為、
       マナが予言したようにパートナー探しに困ることになった




   倫花
    ……それは確かに
    桃ちゃんの言う通りだけど

    でも、誰と組むかは
    早めに決めておいた方がいいよ



   乱花
    放っておこうよ
    五期生は200人もいるんだもん

    いくら九頭竜だって
    組む相手くらい自分で見つけるでしょ



   桃
    そいつの言う通りだ
    組む相手も戦う相手も自分で見つける



   倫花
    桃ちゃん、大丈夫かな



   マナ
    こう言ってはなんですけど
    桃さんのことよりも自分の
    ことを心配すべきでしょう

     ※ 口ではこう言っているが、この後にまたも桃を探しに行った

    この定期戦で、私たちの運命が
    決まるかも知れないんですから



   倫花


    VRクラスの子も
    違うクラスの子も
    誰も脱落しなければいいな……



   (一般区画にて)

   桃

    (独白開始)

    自分以外は全員敵だ
    なのに馴れ合うだと?
    狂気の沙汰だ

    ここは戦場なんだ
    ここは……

    (独白終了)

    戦場?
    何のことだ?

    (独白開始)

    私はどこから来たんだ?
    どこへ行こうとしている?

    (独白終了)

    …………くっ!

    痛いっ!
    頭が割れる……っ!

    はぁ……はぁ……
    痛い……苦しい……

    どうすればこの痛みから
    逃れられる?

    (独白開始)

    はぁ……はぁ……
    戦わなくちゃ

    戦って、殺して、殺し続けてっ
    生き残らなくちゃ……

    (独白終了)

    誰かっ!
    誰でもいいっ!
    戦う相手が欲しいっ!



   ???
    ……欲しい?
    そう、欲しいのだ!



   桃
    …………?



   満腹丸ちゃん
    この際、並盛りでいいから欲しいのだ

    できればとろとろチーズ牛丼
    それもメガ盛りMAXが希望なのですがぁ~



   桃
    ……おい



   満腹丸ちゃん
    言っておくけど

    温泉玉子は外せないのだ
    あれはいいものです
    心が洗われるのだ……

    あれを発明した人は天才なのだ
    まんぷくまるちゃんとしては
    はなまるを差し上げたいっ!



   桃
    おいお前っ!



   満腹丸ちゃん
    それにつけても……
    本当に本当にお腹が減ったのだ……

    このままでは飢えて
    死んでしまうのを待つだけなのだ
    ぐええ



   桃
    お前も……
    飢えているのか?



   満腹丸ちゃん
    ほえ?



   桃
    お前も飢えているのかと
    そう聞いている



   満腹丸ちゃん
    そりゃもう!
    かつてないほどに飢えまくっているのだ!



   桃
    なら話は早い
    ここではじめるぞ



   満腹丸ちゃん
    宴会を?



   桃
    ……なん、だと?



   満腹丸ちゃん
    やったのだぁぁっ!
    やっぱりこのビクニにやって来て
    大正解だったのだぁ!

    重箱、重箱はどこなのだっ!
    その前にゴザを敷かなくちゃ!



   桃
    お前……正気か?



   満腹丸ちゃん
    ん~~~
    正気かと言われれば自信がないのだ

    何しろ今現在、圧倒的に
    栄養が足りていないので?



   桃
    う、うん



   満腹丸ちゃん
    けど、宴会と聞いたらば
    まんぷくまるちゃんとしては
    アクセルゴーゴーなのだ!



   桃

    (独白開始)

    まさか本気で宴会を
    開こうという訳ではあるまい……

    ……はっ!! もしや
    定期戦のバトルロイヤル状態を
    宴会と表現しているのか?

    そうだ、そうに違いない!
    この平和な街並みを戦場に
    塗り替えようというのだな!

    (独白終了)

    満腹丸……
    お前のことを見誤っていたようだ

    見た目は頭悪そうだし
    身体はたるったるに弛んでいるし
    正直侮っていたが

    この場で宴会を開くというのなら付き合おう



   満腹丸ちゃん
    だったれば
    お店屋ちゃんに連絡せねば!
    おぉみぃせぇやぁちゃぁぁんっ!



   越後屋
    まいど!
    呼んだかい?



   満腹丸ちゃん
    ん~~~とそうだなぁ
    どうしようかなぁ~~~

    まんぷくまるちゃんは
    豚まんなのだっ!



   越後屋
    わははっ
    そこだけ聞いてると、まるで満腹丸
    ちゃんが豚まんみたいに聞こえるねぇ



   満腹丸
    ぶ~~~っ!

    まんぷくまるちゃんは
    まんぷくまるちゃんであって
    豚まんではないのだ!

    とにかく、まんぷくまるちゃんは
    朝ご飯を抜いたら、おなかが空き
    すぎて動けなくなってしまったのだ



   桃
    なに?



   越後屋
    こりゃまた、どうして
    朝ご飯を抜いたりしたの?



   満腹丸ちゃん
    そんなの決まってるのだ

    お昼ご飯をよりいっそう
    美味しく食べるためなのだ

    でもでも、このままじゃお昼に
    なる前に、お腹と背中がくっついて
    しまうのだ……



   越後屋
    なるほど
    それでえっちゃんを呼び出したってわけか



   桃
    ……あの



   満腹丸ちゃん
    そう!
    宴会するのだ!



   越後屋
    ほう、宴会かい?
    何かいいことでもあったのかな



   満腹丸ちゃん
    えっとねっ!
    ピーちゃんが~



   桃
    待て
    前から気になってたんだが
    ピーちゃんとは誰のことだ?



   満腹丸ちゃん
    ピーちゃん



   桃
    違う
    私の名前は九頭竜桃だ



   満腹丸ちゃん
    桃はピーチでしょ
    だからピーちゃん



   越後屋
    なるほど間違ってないね



   桃
    間違ってないのか?
    いや、あれ?



   満腹丸ちゃん
    ということでピーちゃん
    宴会の用意をするから
    ちょっと待ってるのだ



   桃
    いや待て
    確認させてくれ

    宴会というのは
    もしかして宴会のことなのか?



   満腹丸ちゃん
    宴会は宴会のことですが?



   桃
    いやそうじゃない
    違うんだ

    注文した豚まんというのは
    例えば爆弾か何かを意味する
    隠語ではなくて?



   満腹丸ちゃん
    ばくだんというのは、マグロに納豆や
    生玉子、オクラとかをぶっかけて
    醤油とわさびで食べるアレのこと?



   越後屋
    色んな種類の具を詰め込んだ
    おにぎりのこともばくだんって言うね



   満腹丸ちゃん
    どっちのばくだんなのだ?



   桃
    いや、どっちというか
    爆発する方の爆弾だ



   満腹丸ちゃん
    うまさが?



   桃
    うまさは爆発しない



   満腹丸ちゃん
    うまさが爆発しないばくだんなんて
    この世に存在する必要を認めないのだ



   桃
    待て、ちょっと待ってくれ

    (独白開始)

    私は何をしている?
    戦わなくちゃならないのに
    強くならなくては――

    (独白終了)



   満腹丸ちゃん
    ピーちゃん
    何だか顔色が悪いのだ

    具合が悪い時は、ごはんに限るのだ!
    さあ、すぐにごはんを!



   桃
    う、私は別に腹が減っている
    訳では――



   満腹丸ちゃん
    さあさあ!



   桃
    くそっ、頭痛が――
    いっそのことこいつを殺せば……



   マナ
    やっと見つけました
    ここにいたんですね

    さ、教室に戻りましょう



   桃
    ……猪名川か



   満腹丸ちゃん
    ピーちゃんは具合が悪いのだ
    すぐにごはんを食べさせないと



   マナ
    大丈夫です
    桃さんのことは、私に任せておいてください



   満腹丸ちゃん
    そう?
    じゃあお任せするのだ



   越後屋
    宴会はまた今度ってことになりそうだね



   満腹丸ちゃん
    ピーちゃん
    具合が良くなったら宴会するのだ
    約束なのだ

    では、ピーちゃんのこと
    よろしくお願いしますなのだ



   越後屋
    えっちゃんも失礼するよ
    もし薬が必要ならお店までおいで

    じゃーね!



   桃
    ……はあ



   マナ
    そんなにあからさまな顔で
    溜息をつかなくてもいいでしょう

    イヤなのはお互い様なんですから



   桃
    だったら何故、私に構う?
    頼んだ覚えはない



   マナ
    嫌われ者は必要でしょう?
    それで五期生をまとめられるなら
    私は喜んでその役を引き受けます



   桃
    私を連れ戻せば
    お前の評価が上がるからだろう



   マナ
    そうですと言えば
    納得して教室に戻ってくれるんですか?



   桃
    お前の評価など
    私が知ったことじゃない



   マナ
    そうですね……
    自分の為ではないとは言いません

    でも、桃さんのためでもあるんです

    治療プログラムだって授業の一環なんですよ

    授業にもきちんと出席しなければ
    この島から放り出されてしまいますよ

     ※ やはり桃を気遣っている



   桃
    ……治療プログラムか



   マナ
    さあ
    今なら2時限目には間に合います
    教室に戻りましょ



   桃
    ……わかった
    戻ってやってもいい



   マナ
    よかった、桃さん!
    分かってくれたんですね!



   桃
    だが、その前に少し付き合ってもらう
    ついてこい



   マナ
    えっ? そっちは教室じゃ
    ありませんけど、いったいどこへ――



   倫花
    マナちゃんも桃ちゃんも
    戻ってこないね

    どこまで連れ戻しに
    行ったんだろう

    やっぱり私たちも一緒に
    行った方が良かったかも



   乱花
    冗談でしょ
    九頭竜の好きにさせておけばいいと思うけど

    ま、副筆頭さんは
    そうもいかないらしいけど

    大変だよね
    200人もいる五期生をまとめないと
    いけないんだからさ



   倫花
    そうだね
    私だったら3日で肩が凝って
    イヤになっちゃう



   乱花
    肩こりか

    こんな大きいのぶら下げてたら
    そりゃ肩も凝るよねぇ
    うんうん



   倫花
    ど、どこを見てるのよ
    私は肩が凝るって言ったんでしょ



   乱花
    揉んであげようか?



   倫花
    絶対にイヤ!
    そんなこと言って、乱花ちゃん
    肩じゃなくて胸を揉む気でしょ



   乱花
    鋭いじゃないの、お姉ちゃん
    では思いっきり揉んで――
    あれ?



   倫花
    どうしたの?



   乱花
    あれって九頭竜と……



   倫花
    マナちゃんよね



   乱花
    あれっ
    教室をスルーしちゃった



   倫花
    どこへ行くのかな



   乱花
    これはもしかしてアレかな?
    屋上までツラ貸しなってヤツ?



   倫花
    どういうこと?



   乱花
    相手の態度にキレて
    実力で決着をつけようってことなんじゃない?

    九頭竜か猪名川か
    どっちが先にキレたかは知らないけど



   倫花
    そんな、大変っ!
    追い掛けて二人を止めないと!



   乱花
    別に止めなくてもいいんじゃない?
    でも、どっちが勝つか興味はあるな
    よし、行こう!  お姉ちゃん!



   倫花
    うんっ!



   (修練場にて)

   マナ
    こんなところに
    何の用事があるんですか?



   桃
    …………



   コンゴウ
    今は授業中のはず
    何をしに来たのだ?

    桃、マナ……
    そして神楽坂姉妹



   マナ
    え?



   乱花
    うへ、バレてた
    コンゴウ先生の目は欺けないか



   マナ
    倫花さん、乱花さんも
    ここで何をしてるんですか?
    授業はどうしたの?



   倫花
    二人が物々しい様子で
    修練場へ向かうのを見掛けて
    追い掛けてきたんだ

    もしケンカなら
    止めなくちゃって思って



   マナ
    私たちはケンカなんてしていません
    ただ桃さんが、教室へ戻る前に用事が
    あるというから付き合っただけで



   コンゴウ
    用事、だと?



   桃
    逆に私の方が聞きたいぐらいだ

    授業も治療プログラムも
    どうでもいい

    そんなものを求めて
    ここへ来たんじゃない
    私は戦うためにここへ来たんだ

    まずはコンゴウを倒す

    猪名川
    私に言うことを聞かせたいのなら
    私の役に立って見せろ

    副筆頭だか何だか知らないが
    お前の評価のために私をダシに
    しようと言うんだろう?



   倫花
    それは違うよ、桃ちゃん!
    マナちゃんは桃ちゃんのことを
    心配してるんだよ!



   桃
    口を挟むな
    神楽坂倫花
    お前には関係ない話だ



   乱花
    ちょっと待った!

    黙って聞いてれば
    好き勝手なことを言ってくるじゃない

    気に食わないなぁ



   桃
    お前こそ関係ないだろう



   乱花
    それが気に食わないって言ってんのよ

    私はともかく
    お姉ちゃんの意見を無視するな!
    こんにゃろー!



   桃
    ……何を言ってるのか
    意味がわからないんだが



   乱花
    それに、物事には順番って
    ものがあるわけ

    私とお姉ちゃんを差し置いて
    コンゴウ先生に再挑戦しようなんて
    厚かましいじゃない?



   コンゴウ
    ふむ、一理あるか?



   桃
    ならば、お前から叩き伏せるだけだ



   乱花
    やれるもんならやってみな



   桃
    猪名川、もう一度言うぞ
    私の役に立って見せろ



   マナ
    ……いいでしょう
    それで桃さんが授業に出てくれるなら



   倫花
    マナちゃん!



   マナ
    二人とも、悪く思わないでね
    これが最善だと思ったんです

    それと、こうなったからには
    私も手加減はできません

    ケガをしないように
    本気でかかってきてくださいね



   乱花
    気にしないで
    元よりそのつもりだし



   コンゴウ
    よく分からぬが、積もった鬱憤は
    身体を動かすことで発散させるがよかろう

    では、存分に思いの丈をぶつけよ
    はじめいッ!




  5-A-後

   倫花
    はぁ……はぁ……
    乱花ちゃん平気……?



   乱花
    私は大丈夫……
    お姉ちゃん立てる?
    ……痛っ



   倫花
    無理しないで……
    ほら、私に掴まって



   桃
    あれだけ啖呵を切っておいて
    その程度か?



   倫花
    桃ちゃん……



   桃
    まったく物足りないな
    それが本気だとは認めない

    立てっ!
    立ってもう一度戦え!



   マナ
    その辺りで終わりにしなさい
    もういいでしょう

    これ以上は死体を蹴るような
    ものですよ



   乱花
    死体って私たちのことか!?



   マナ
    他にいますか?
    倫花さんも乱花さんも認めなさいな
    実力の差は歴然です

    治療班を手配しました
    出直していらっしゃい



   乱花
    猪名川、お前……!
    覚えてろーっ!



   桃
    いいのか?
    あんなことを言って



   マナ
    あなたと組むと決めた以上
    相手に情けをかける必要はありません

    (独白開始)

    それに、ああでも言わなければ
    桃さんも乱花さんも引っ込みが
    つかなかったでしょうし

    (独白終了)

    はあ
    これじゃ本当に嫌われ者ですね……

    さてと
    では戻りましょうか、桃さん

     ※ 自分がどう思われるかより、相手を優先している



   桃
    まだコンゴウと戦っていない



   マナ
    でも、私が桃さんの役に立ったら
    言うことを聞いてくれる約束でした



   桃
    それはそうだが
    しかし、コンゴウと戦うために
    神楽坂と戦ったんだぞ



   マナ
    約束は約束です
    ほら、いきますよ



   桃
    お、おい!
    私はまだ戦える!



   マナ
    ではコンゴウ先生
    失礼します



   桃
    コンゴウ、私と戦え!!
    はなせ猪名川!
    やめろ!




  5-B-前

   (エリート区画にて)

   桃
    猪名川、いい加減放せ
    自分で歩ける



   マナ
    あぁ、ごめんなさい



   桃
    それに、ここはどこだ?
    教室へ連れ戻すんじゃなかったのか?



   マナ
    倫花さんと乱花さんと戦っている間に
    授業は終わってしまいましたから



   桃
    じゃあ、お前がしたことは
    意味がなかったことになる



   マナ
    いいえ、意味はありました

    なんと言っても
    神楽坂姉妹に勝ったんですもの
    とってもスッキリしました

    副筆頭とかは別にして
    負けっ放しというのも悔しいでしょう?
    桃さんのおかげで雪辱を果たせました



   桃
    ふん、どうでもいい
    だが約束は約束だ
    付き合ってやる

    で、どうしてこんなところへ
    私を連れてきたんだ?



   マナ
    ここは選ばれた成績優秀者だけが
    住むことを許されている区画です



   桃
    いわゆるエリート区画か
    まったく興味ないな



   マナ
    ねえ桃さん
    二人でポイントを出し合って
    この区画に引っ越しませんか?



   桃
    もう一度言うぞ
    まったく興味がない



   マナ
    どうしてですか
    環境はいいし、お手伝いロボット
    だって支給されるんです

    いいことずくめじゃありませんか



   桃
    住む場所なんて
    雨露がしのげさえすればいい



   マナ
    ここに住んでこそ
    名実共にエリートとして認められるんです

    筆頭を目指すからには
    住むにも相応しい場所と
    いうものがあるでしょう



   桃
    そんなに住みたければ
    お前一人で勝手に住めばいい



   マナ
    そうはいかないから
    こうやって相談してるんじゃありませんか

    ここに住みましょうよ~
    ね? ね? 桃さん
    いいでしょう~?

    私と一緒に、次のステップに
    上がりましょう!

     ※ 最後には結婚が待っているはず……!



   桃
    ちっ
    また面倒な話になってきた……



   (食堂にて)


   倫花
    乱花ちゃん?
    ここ、食堂よね?

    私たち、ケガの治療に来たんじゃなかった?



   乱花
    このくらいの傷、なんてことないよ
    とにかく食べて、力を蓄えなくちゃ

    九頭竜はともかく
    猪名川にまでバカにされて
    黙って引き下がれないよ



   倫花
    あれは、マナちゃんが
    気を遣ってくれたんだよ

     ※ やはり鋭い



   乱花
    はあ?
    だって私たち、死体とまで言われたんだよ?



   倫花
    そうでも言わなくちゃ
    桃ちゃんも乱花ちゃんも
    収まりがつかなかったでしょ

    あのまま戦い続けてたら
    本当にケガ人が出てたはずだよ



   乱花
    それは……
    そうかも知れないけど



   倫花
    それにあの流れだったら
    どっちが勝っても桃ちゃんは
    授業に出なくちゃならないんだよ



   乱花
    へ?
    なんでそうなるの?



   倫花
    私たちが勝てば、桃ちゃんたちは
    コンゴウ先生への挑戦権を失うし

    向こうが勝てば、桃ちゃんは
    マナちゃんとの約束を守って
    授業に出なくちゃいけなくなるから



   乱花
    あっ、本当だ!
    全然気づかなかった!

    猪名川ってば、そこまで考えて
    九頭竜と組んだのか……ふむ

    それに気付いてたお姉ちゃんもさすがだね



   倫花
    だから負けてよかったんだよ
    そう思ったら悔しくないでしょ?



   乱花
    まーね!
    勝ち負けはともかくお腹が減ったよ



   ???
    こっちの方が100倍は
    おなかが空いてるのだ



   乱花
    お姉ちゃん
    そんなにおなか減ったの?
    100倍は言い過ぎじゃない?



   ???
    おなかが減ってるのはこっちなのだ



   乱花
    うわっ
    びっくりした!
    どうしたの?



   満腹丸ちゃん
    だから、おなかが減ってるのだ



   乱花
    おなかが減ったぐらいで
    そんな今にも死にそうな顔しなくても……



   満腹丸ちゃん
    まんぷくまるちゃんにとっては
    空腹は死活問題なのだ!

    このままでは空腹丸ちゃんに
    名前を改めなくちゃならなくなってしまうのだ

     ※ 満腹丸の境遇、ビクニ以前



   倫花
    それは大変!
    すぐに何か食べなくちゃ!



   満腹丸ちゃん
    ありがとうなのだ

    でも、ごはんはピーちゃんが来るのを
    待ちます……のだ



   乱花
    ピーちゃん?
    誰?



   満腹丸ちゃん
    ピーちゃんと宴会する約束をしたから
    それまでごはんはガマンします

    なので一緒にピーちゃんを
    探して欲しいのだ



   倫花
    でも、そのピーちゃんが誰なのか
    分からないと探しようがないよ



   満腹丸ちゃん
    えーと、えーっとね
    そうだ!

    一番、まんぷくまるちゃん!
    ピーちゃんのマネをしまっす!

    ……取り合えず殺ス



   乱花
    九頭竜じゃん!
    うわ、似てる似てる!
    もっかいやって!



   満腹丸ちゃん
    ……食前食後に殺ス



   乱花
    あっはっはっは!
    すっごい似てる!



   満腹丸ちゃん
    褒めてくれなくていいから
    ピーちゃんを探してきて欲しいのだ



   乱花
    だそうだけど
    お姉ちゃん、どうする?



   倫花
    乱花ちゃん
    桃ちゃんを探しにいこう!



   乱花
    はいはい
    そう言うと思った

    まったくお人好しなんだから
    お姉ちゃんは



   倫花
    待っててね
    すぐに連れてくるから!



   満腹丸ちゃん
    ありがたや、ありがたや
    でも人の好意に甘えてばかりではダメなのだ

    まんぷくまるちゃんも
    ピーちゃんを探さなくちゃ……



   マナ
    いいですか桃さん
    私とあなたは、ここに住む
    権利があるんですよ?



   桃
    何度でも言う
    興味ない
    勝手にしろ



   マナ
    桃さんが一緒に来てくれないと
    引っ越しの許可が下りないんです
    私たちはルームメイトなんですから

    住めば都と言いますし
    ね? 引っ越すくらいいいでしょ?

    これは桃さんのためでもあるんです



   桃
    いい加減にしろ
    本当に殺すぞ?
    お節介は負けるのの次に嫌いなんだ



   マナ
    瀟洒で落ち着きがあって
    勝者が住むに相応しい場所だと
    思いませんか?



   桃
    …………



   マナ
    あ、今のは「瀟洒」と「勝者」を
    かけたんですけど、わかりました?



   桃
    …………



   マナ
    勝った人という意味のショウシャと
    すっきりしていて格好いいという意味の
    ショウシャを……



   桃
    おまえ、自分で言った冗談の説明をして
    虚しくないか?



   マナ
    もおおお!
    分かってるなら反応してください!
    はー、恥ずかしかった



   桃
    興味など全くない
    それに一番最初に言ったはずだ

    私の邪魔をするな、と



   ???
    今度はあなたたち?



   ヴァイオラ
    どうして一山いくらのドブネズミが
    こんなところを這いずり回ってるのかしら?



   マナ
    お生憎様です
    私たちは今度こちらで暮らすことに
    なったんです



   ヴァイオラ
    はん?
    ちょっと言っている意味がわからないわね

    ネズミの言葉は理解できないわ



   マナ
    では解かるように言って差し上げます

    この度、五期生の副筆頭に抜擢された
    私こと猪名川マナは、エリート区画に
    住む資格を手に入れたんです

    あなたに文句を言われる筋合いでは
    ないと思いますけど



   ヴァイオラ
    文句なんて言ってないでしょ

    ただドブネズミ臭いわ
    そう言ってるだけ



   桃
    確認しておくが――

    治療プログラムに貢献する
    戦闘行為は、すべからく推奨
    されるんだったな?



   ヴァイオラ
    それがどうかした?



   マナ
    ちょ、ちょっと桃さん
    もしかしてあなた、ヴァイオラさんに
    ケンカを売るつもりじゃ



   桃
    エリート区画に住むんだろう?
    キーキーうるさいキツネを駆除しておく
    必要があると思うんだがな



   ヴァイオラ
    やれやれね
    尻尾を巻いて逃げ帰ればいいものを……

    筆頭だか飼育委員だか知らないけど
    小春も何をしているんだか

    あなたたち、自分がどういう
    状況に置かれているのか、少しも
    分かっていないのね



   マナ
    どういうことですか?



   ヴァイオラ
    ビクニは学生の遊び場ではないのよ

    正直、腹が立つわ
    自分が何者か、どうしてここにいるのか
    わかってもいない分際で



   桃
    自分が何者か……?



   ヴァイオラ
    身の程を弁えないネズミに
    目の前をうろちょろされるのも
    うっとうしいわ

    自分がどの程度なのか
    身を以って思い知るいい機会かも知れないわね

    そこに隠れているデブスライムっ!
    出てきなさい!!



   ???
    ……ぎくっ!
    なのだ



   満腹丸ちゃん
    わわわ、まんぷくまるちゃんは
    ピーちゃんを探しに来ただけで



   桃
    満腹丸!!



   満腹丸
    ケンカはやめよ?
    無駄なカロリーの消費は悪徳なのだ



   桃
    水を差すな、満腹丸



   満腹丸ちゃん
    ケンカなんてバカのすることだよ?
    どうせなら、ばいおちゃんも一緒に
    宴会をするのだ



   ヴァイオラ
    満腹



   満腹丸ちゃん
    はい?



   ヴァイオラ
    特上の鰻重五人前でどう?



   満腹丸ちゃん
    肝吸いとデザートもつく?



   ヴァイオラ
    よくってよ



   満腹丸ちゃん
    契約成立なのだ!
    ピーちゃんをぶっちめて鰻重をゲットするのだ!



   マナ
    あ、あなた
    勢いよく掌を返しすぎじゃありませんか?

    ケンカなんて無駄なカロリーの
    消費だとか言ってたででしょう



   満腹丸ちゃん
    新たにカロリーを補給できるなら
    無駄ではありませんし?



   桃
    構わない
    戦えるなら何でもいい



   マナ
    はあ
    やるしかない……
    みたいですね



   ヴァイオラ
    では、はじめましょう

    キツネがどうやってネズミを
    狩るか、身を以って思い知りなさい




  5-B-後

   ヴァイオラ
    もう終わり?



   桃
    まだ……だ
    私はまだ生きているぞ……



   ヴァイオラ
    あんまりやり過ぎても
    あとで小春に怒られるんだけど

    一人くらい減っても構わないか……



   マナ
    ……ま、参りました
    降参です



   ヴァイオラ
    やっと意味が分かる言葉を聞けたわ



   マナ
    これほどの差があるとは
    想像もしていませんでした……

    副筆頭の役職を辞退します
    ヴァイオラさんこそ相応しい



   ヴァイオラ
    副筆頭の副って
    ナンバー2って意味でしょ?
    そんな役職いらないわ



   マナ
    なら、せめて私とペアを
    組んで下さい!



   ヴァイオラ
    嫌よ
    全身全霊でお断り



   マナ
    そ、そんな……



   ヴァイオラ
    あなたと組むくらいなら
    まだこっちの方がマシだもの



   満腹丸ちゃん
    うう、目が回る……

    振り回されたのとお腹が空いたので
    ラーメンジロンの肉マシマシぐらい
    目が回ったのだぁ~



   ヴァイオラ
    鰻重五人前は、あとで届けさせるわ



   満腹丸ちゃん
    お願いしまっす!



   マナ
    私は満腹丸さんにも
    及ばないって言うんですか?



   ヴァイオラ
    ほら、それすら分かってない
    その程度なのよ、あなたたちは



   マナ
    そう、ですか……



   ヴァイオラ
    あなた、この区画に住みたいと
    言っていたわよね



   マナ
    その話はもう諦めます
    すみませんでした



   ヴァイオラ
    ここのところ、小春が筆頭の仕事で
    忙しくて、ちっとも訓練に付き合って
    くれないのよね

    あなたがエリート区画に住むというなら
    練習用のパートナーとして
    雇ってあげてもいいけど



   マナ
    それで構いません!
    お側において下さい!



   ヴァイオラ
    引越の手配は越後屋に頼みなさい

    爪の垢ほどだけど
    あなたに興味が湧いたわ

     ※ 上昇志向のマナは、ヴァイオラにとって見所がある
       小春に認められる為に必死なヴァイオラは、思うところがあるのだろう




   マナ
    ありがとうございますっ!
    私、パートナーとして一生懸命頑張りますっ!



   桃
    …………



   マナ
    ……悪く思わないでください
    桃さんを裏切るつもりはないんです

    ただ、さっき言ったとおり
    私は次のステップに進みたい
    脱落したくないんです

    いいえ
    何を言ってもただの言い訳ですね
    ごめんなさい

      ※ 桃は何度もマナの差し伸べた手を振り払ってきた、仕方が無いだろう



   桃
    私は最初から独りだ
    気にするな



   マナ
    ごめんなさい……



    桃
    ……どうでもいい
    私には関係ないことなんだ



   満腹丸ちゃん
    あのぅ……



   桃
    お前も行け



   満腹丸ちゃん
    もしかして鰻重に目が眩んで
    やらかしちゃったのだ?



   桃
    一人にしてくれ
    頼む



   満腹丸ちゃん
    ごめんなのだ……



   桃
    自分が何者か、か……

    思い出せるのは
    硝煙の匂いと無人の焦土だけ……

    くそっ!!





 Drive06. 消された記憶と消えない想い


  6-A-前

   (食堂にて)

   桃

    (独白開始)

    ……どうでもいい

    私は独りでもやっていける
    今も昔も……

    なのにどうして、こんなに心がざわつく?

    私は一体、何のために
    この島へ来たんだ……?

    (独白終了)

    く……うっ!

    ま、まただ……
    また、頭が……っ

    (独白開始)

    島に来る以前のことを
    思い出そうとすると
    頭が割れるように痛み出す

    何故だ?
    どういうことなんだ?

    (独白終了)

    それとお前
    どうして私についてくる?



   満腹丸ちゃん
    え~っと、その~



   桃
    用事があるなら言え
    ないならどこかへ行け



   満腹丸ちゃん
    ……宴会は?
    宴会はどうするのだ?

    約束したのだ
    一緒に宴会するって



   桃
    そんな状況ではないことくらい
    少し考えれば分かるだろう



   満腹丸ちゃん
    でもでも!
    ピーちゃんと宴会をするために
    ごはんまで抜いてきたのだ!



   桃
    腹が減ったのなら
    特上の鰻重でも食べればいいだろう



   満腹丸ちゃん
    くっ……!

    やっぱりピーちゃんは
    ばいおちゃんと組んだことを怒ってるのだ……



   桃
    怒ってなどいない
    どうでもいい



   満腹丸ちゃん
    じゃあじゃあ
    一緒に宴会するのだ!



   桃
    宴会はしないと
    言っただろう



   満腹丸ちゃん
    おなかぁ~~~
    お腹空いたのだぁ~~~っ!



   桃
    泣くな!
    うっとおしい!
    本当に殺すぞっ!



   満腹丸ちゃん
    ピーちゃん
    殺される前にひとつだけお願いがあるのだ

    お願い聞いてくれたらもう何も言わないのだ



   桃
    さっさと言え
    私は……



   満腹丸ちゃん
    私は?



   桃
    なんでもないっ



   満腹丸ちゃん
    ほぇ?



   桃

    (独白開始)

    ……本当にどうかしている

    自分の気持ちを人に
    話そうと思うだなんて……

    (独白終了)

      ※ 変わりつつある


   (神社前)

   倫花
    桃ちゃん
    どこにもいないな……

    家にも帰ってないみたいだし
    マナちゃんとも連絡つかないし

    本当にどこへ
    行っちゃったんだろう

    早く戻ってこないと
    大変なことになっちゃうよ

    もしかしたら
    行き違いになってるのかな

    一度戻ってみよう



   (食堂にて)


   桃
    ……約束は守れよ



   満腹丸ちゃん
    かたじけのうござる
    かたじけのうござる

    地獄にホットケーキとは
    このことなのだ



   桃
    ……意味がわからん



   満腹丸ちゃん
    地獄にホッケとも言うのだ

    そこに大根おろしがあると
    モアベターだと思うわけです



   桃
    喋べるか食べるかどちらかにしろ
    飯の替わりに埃が入るぞ



   満腹丸ちゃん
    では食べる方に集中させて
    いただきますなのだ



   桃
    お願いだなんて言うから何かと思えば
    結局食べ物のことじゃないか……



   倫花
    あーっ!
    見つけた!!

    なんで二人でのんびり
    ごはんなんて食べてるの!?



   桃
    別にのんびりしてないし
    これには紆余曲折があってだな



   倫花
    とにかく見つかって良かった!



   桃
    こいつに用事か?
    できれば引き取って欲しいんだが



   満腹丸ちゃん
    ふごっ?
    ごはんを食べさせてくれるなら
    どっちでもいいけど……

    まあいーや
    とにかくいただきますなのだ!



   倫花
    私が探してたのは桃ちゃんの方だよ!



   桃
    私に用事?



   倫花
    そうだよ!
    大変なんだよ!



   桃
    言わなくていい
    どうせまたくだらないことだろう



   倫花
    どうでもいいかは
    せめて聞いてから判断してよ



   桃
    私の前で喚くな

    くそっ
    頭に響く……



   倫花
    桃ちゃん?
    どうしたの?



   桃
    うるさいっ!
    黙らなければ殺すぞ!



   理事長
    そこまで!
    食堂内での戦闘は御法度と伝えたはずよ



   倫花
    理事長先生!!



   桃
    ……次から次へと
    うっとうしい



   理事長
    倫花さんと同じ要件よ



   桃
    神楽坂と同じ用?
    どうして理事長が?



   理事長
    桃さん、あなた
    定期戦のパートナーの申請をしていないわね



   桃
    ……ああ



   倫花
    あれっ?
    桃ちゃんはマナちゃんと組むんじゃないの?



   桃
    猪名川か
    あいつとは組まない
    もう、組めない



   倫花
    ど、どうして?



   桃
    猪名川自身が決めたことだ
    私が口出しすることじゃない



   倫花
    じゃあ、桃ちゃんは
    誰と組んで定期戦に出るの?



   桃
    誰でもいい
    私は一人でも戦う



   倫花
    でも、他のほとんどの五期生も
    もうパートナーを決めちゃったみたいだけど



   桃
    ……なに?



   理事長
    パートナーがいない場合
    定期戦には出られないわよ?



   桃
    一人では参加できないのか!?



   理事長
    当たり前でしょう
    V-ウイルスの治療のための定期戦なんだし



   桃
    で、定期戦に参加できなければ
    どうなるんだ?



   理事長
    ビクニでの治療に不適合と
    言うことで、他の島に移ってもらうことになるわ



   桃
    それは困る!
    私はここへ戦いに来たんだ!
    戦って強くなるために!



   理事長
    それが戦いでも、お金儲けでも
    治療にさえ貢献すれば構いません

    V-ウイルスの治療に貢献すること
    それがビクニにいられるただひとつの条件なの

    他の誰かと組み、ヴァルキリーとして戦うこと

    それが定期戦への最低限の参加条件です



   桃
    パートナーがいなければ
    戦うことも許されないのか?



   理事長
    そういうことね

    あなたには期待していたんだけど……

     ※ 力を持ち、絶望を知る桃は、新たな神となる資質がある



   桃
    期待?
    何をだ



   理事長
    申請の締め切りは本日中です

    確かに伝えたわよ
    九頭竜桃さん



   桃
    おい、待てっ!

    ……ちっ
    一人では参加できないなんて
    私は聞いてないぞ



   倫花
    それは桃ちゃんが
    ホームルームに出ないから



   桃
    じ、自業自得なのは認める
    だが、どうすればいい?

    戦いなら誰にも負けない自信がある
    だが、戦いに参加できないのは困る

    私は、戦うことしか知らないんだ……

     ※ マナは幾度となくパートナーとして気に掛けてくれていた、
       授業にも出るように桃を探し、自分の時間を削ってもいた

     ※ 倫花はホームルームに出るように言っていた




   倫花
    う~ん、私はもう乱花ちゃんと
    パートナー申請しちゃったし……



   満腹丸ちゃん
    ぷはーっ!
    ごちそうさまでした!

    やー、まんぷくまんぷく



   桃
    ちょっと黙っていろ
    こっちは大事な話をしているんだ



   満腹丸ちゃん
    いただきますと
    ごちそうさまは
    とてもとても大事なのだ



   倫花
    うんうん
    満腹丸ちゃんの言う通りだね



   桃
    神楽坂、お前まで乗っかるな
    話がややこしくなるだろう



   満腹丸ちゃん
    で?
    大事な話ってなんなのだ?



   倫花
    定期戦に出るための
    桃ちゃんのパートナーが
    見つからなくて困ってるの



   桃
    おい、こいつに話しても
    どうしようもないだろう



   満腹丸ちゃん
    はー
    そんなの別に困ることないのだ



   桃
    なんだと?
    お前、人ごとだと思って適当なことを――



   満腹丸ちゃん
    まんぷくまるちゃんと
    組めば?



   桃
    ……なに?



   満腹丸ちゃん
    ピーちゃんと
    まんぷくまるちゃんで定期戦に出ればいいのだ



   倫花
    満腹丸ちゃん
    まだパートナー申請してないの?



   満腹丸ちゃん
    毎回、まんぷくまるちゃんと
    組みたいって人がいっぱい来るから
    まだ決めてなかったのだ

    ギリギリまで待てば待つほど
    報酬のごはんの量が増えますし?
    フヒヒ



   桃
    お、おまえ
    案外腹黒いな



   満腹丸ちゃん
    ごはんのためなら何でもします!
    生物としての当然の論理なのだ!



   桃
    う、うん
    確かに正しいかも知れないが……



   満腹丸ちゃん
    でーもー、なのだ
    今回は全ての申し込みを蹴って
    ピーちゃんと組みます!



   桃
    組む?
    満腹丸と?
    私が?



   満腹丸ちゃん
    そんなイヤそうな顔しなくても~



   倫花
    桃ちゃん
    満腹丸ちゃんと組めば、少なくとも
    定期戦には出られるよ



   桃
    でも、満腹丸だぞ?



   倫花
    戦いになれば、誰がパートナーでも
    勝つ自身はあるんでしょ?



   桃
    もちろんだ



   倫花
    だったら、満腹丸ちゃんの
    申し出を受けようよ



   満腹丸ちゃん
    ねーねー
    組もうよ~



   桃
    わかったわかった!
    満腹丸、お前と組んでやる



   満腹丸ちゃん
    やった!
    決まりなのだ!



   倫花
    よかった!
    これでひと安心だね!

    それじゃ今すぐ
    パートナー申請を済ませに行こ!



   桃
    あ、ああ



   満腹丸ちゃん
    ほら、ピーちゃん
    一緒に行くのだ



   桃
    ……礼は言わないからな

   (エリート区画にて)


    けっこう歩くんだな



   満腹丸ちゃん
    食後の腹ごなしにはちょうどいいのだ

    パートナー申請が済んだら
    また食べられるねえ



   倫花
    ところで、パートナー申請って
    どこへ届ければいいの?



   桃
    ……なんだと?
    知らないのか?

    神楽坂はパートナー申請を
    済ませたんじゃなかったのか?



   倫花
    私はホームルームの時間に提出したよ



   桃
    じゃあ私たちは
    どこへ向かって歩いているんだ?



   倫花
    私は桃ちゃんが知ってると思って



   満腹丸ちゃん
    ピーちゃんが知ってると思って



   桃
    あ、私が知る訳ないだろう!



   満腹丸ちゃん
    ひ~!
    逆ギレなのだ!



   倫花
    う~ん
    この辺りにいる誰かに聞いてみようか



   桃
    行き当たりばったりだな



   倫花
    せめて、私たちが今いる
    この場所がどこかくらいは把握しておかないと

    あの~、ちょっといいですか?
    私たち、迷子になってしまって
    ここがどこか教えてもらえませんか?



   ヴァイオラ
    ……またあなたなの?
    学習能力がないのかしら



   マナ
    倫花さん!



   倫花
    わっ、マナちゃん!
    ヴァイオラちゃん!

    よかった~!
    知ってる人に会えて!



   ヴァイオラ
    少しも良くないわ
    私の気分も、あなたたちのおつむもね



   桃
    気分が悪いのはお互い様だ
    次の定期戦では、真っ先に叩き潰してやる



   マナ
    桃さん、新しいパートナーを
    見つけたんですか?



   満腹丸ちゃん
    はいはーい!
    ピーちゃんのパートナーの
    まんぷくまるちゃんでっす!



   ヴァイオラ
    へえ
    あなたたち、パートナーを組んだんだ



   マナ
    そうですか
    良かった……

     ※ まだ桃を気遣っている



   桃
    ふん



   ヴァイオラ
    で、その即席コンビで私をどうするって?

    叩き潰すとか聞こえたけど
    気のせいよね?



   桃
    今、ここで叩き潰してやろうか?



   ヴァイオラ
    あははは!
    前回、あれだけ叩きのめされて
    良くそんな口が利けるものね



   マナ
    桃さん
    いくら何でも認識が甘すぎます

    もし定期戦でヴァイオラさんと
    戦うようなことがあれば、全力で逃げてください

    何なら棄権してもいい

    勝ち目のない相手に挑んで
    ケガをするよりもずっとマシです

     ※ またも桃を気遣う



   桃
    お説教はたくさんだ
    猪名川、お前に戦いの何が分かる



   マナ
    分かっていないのは桃さんの方です!



   ヴァイオラ
    アメーバと同レベルの単細胞に
    口で言っても理解しないわよ、マナ



   マナ
    私は、できれば桃さんや
    他のみんなにも生き残って欲しいんです

     ※ VR-クラスだけでなく、通常クラスの生徒も



   ヴァイオラ
    ならばマナ、あなたが教えてあげなさいな

    ヴァルキリードライヴの何たるかを



   マナ
    ……わかりました



   満腹丸ちゃん
    ばいおちゃんがリブレイターを
    するんじゃいないのだ?



   ヴァイオラ
    はっ、私があなたたちに
    勝ったところで当たり前すぎて
    何の教訓にもならないでしょ



   桃
    いいのか?

    猪名川の実力は
    昨日まで組んでいた私が一番よく知っている



   マナ
    そう……ですね
    戦い以外に取り柄のない桃さんが
    私に負ける訳にはいかないでしょうね



   桃
    ご託は必要ない
    かかってこい



   マナ
    言葉で伝わらないのなら
    致し方ありませんね……




  6-A-後

   マナ
    ……ガッカリです

    心の何処かで
    桃さんは強いと信じていました

    あなたを裏切った私を
    打ちのめしてくれることを期待していました

     ※ 自分が裏切ったと言っているが、
       桃が徹頭徹尾マナを無視したのが、原因の多くを占めている




   満腹丸ちゃん
    これはこれは
    ドM宣言なのだー?



   マナ
    ごほん
    そうではなくてですね



   桃
    どうして負けた?
    猪名川相手に、私が後れを取るなど……



   ヴァイオラ
    所詮はその程度だったのよ

    私は何もしてないわ
    ただマナの戦い方に合わせただけ

    彼女が思うまま戦えるように
    手を添えただけよ

    それだけで、ここまで差が出るわけ
    理解できたかしら



   桃
    猪名川……
    くっ



   マナ
    ヴァルキリーは、パートナーとなる
    相手がいてこそ戦える――

    いいえ、戦いそのものだって
    敵という誰かがいて成立するんです

    でも桃さん
    あなたは誰も見ようとしない
    誰の声も聞こうとしなかった

    私があなたを見限ったのは
    あなたが私を見てくれなかったから

    あなたは誰と戦っているの?



   桃
    …………



   マナ
    桃さんと満腹丸さんの
    パートナー申請は、副筆頭である
    私が責任を持って登録しておきます

    もし定期戦で私たちと
    また戦うようなことがあれば――

    見逃してあげますから
    逃げてくださいね



   桃
    猪名川、貴様……っ!



   ヴァイオラ
    はい、そこまで
    笑えもしない茶番だわ

    ただ、これはマナがあなたに
    向けた精一杯の優しさだということを
    忘れないことね

    番狂わせは起きないわ
    あなたが変わらない限り

    行くわよ、マナ

     ※ これを機に、桃は変わっていくことになる



   マナ
    は、はいっ



   倫花
    桃ちゃん!
    大丈夫!?



   桃
    空っぽ、だ……

    (独白開始)

    何にも残っていない……

    (独白終了)

    ここも
    私の居場所ではなかったのかも知れない



   倫花
    ここも……?



   桃
    そうだ
    ここも、だ

    猪名川の言う通りだ
    私は誰と戦っていたんだろう

    私は――



   満腹丸ちゃん
    うにゃぁぁぁ~~~
    まだグルグルしているのだぁ

    ピーちゃん、武器の扱いが酷いのだ
    せっかく食べたごはんを、ぜ~んぶ
    まき散らすところだったのだ

    うえっぷ



   倫花
    わわわっ!!



   桃
    お、おい!
    ここで吐くな!



   満腹丸ちゃん
    そんなもったいないことはしないのだ!

    一度口に入れたものは
    意地でも消化しなければ!
    んぐぐぐぐ



   桃
    ……すまなかった、満腹丸



   満腹丸ちゃん
    ほえ?



   桃
    戦っている最中
    私はお前のことを考えもしなかった

     ※ これまでのマナとの関係、ヴァイオラの発言が、桃に自省を促した



   満腹丸ちゃん
    まあまあ
    次は優しくお願いするのだ



   桃
    ……次だって?
    お前、なんとも思わないのか?

    これだけ叩きのめされて
    悔しいとか、自分の弱さに絶望したとか



   満腹丸ちゃん
    ん~~~~~~~っ
    まんぷくまるちゃんにはよくわかりませんなー

    勝つとか負けるとか
    どうでもよくない?



   桃
    では、お前は何のために戦うんだ?



   満腹丸ちゃん
    ごはんを食べるためですけども



   桃
    お前に聞いた私がバカだった



   満腹丸ちゃん
    バカとはしつれーな!
    腹が減っては戦はできぬと
    言ったのはナポレオンでしたか

    どやっ
    まんぷくまるちゃんの博識ぶり!



   桃
    何が言いたい



   満腹丸ちゃん
    つまり、戦ったらおなかが減ったので
    ごはんを食べませんかということなのだ



   桃
    ……いいだろう
    腹一杯、好きなだけ喰わせてやる



   満腹丸ちゃん
    ホントなのだ!?
    やったぁぁぁ!!



   桃
    どうせこの島で使えるポイントなど
    出て行く私には必要ないものだからな



   倫花
    桃ちゃん
    結論を急ぐのはやめようよ

    追い出されるのは定期戦のあとだって
    構わないんだし



   桃
    それはそうだが……
    神楽坂、お前ときどき酷いことを
    しれっと言うよな



   倫花
    とにかく、ごはんを食べながら
    これからどうする考えようよ



   桃
    ……わかった

     ※ かなり素直になってきている




  6-B-前

   (食堂にて)


   満腹丸ちゃん
    えーっと、えーっと
    本当に何でも頼んでいいのだ?



   桃
    ああ、好きなだけ頼め



   満腹丸ちゃん
    じゃあ、メニューのここからここまで
    ぜ~んぶくださいなのだ!!



   倫花
    そんなに食べるの!?
    おなか壊しちゃうよ



   満腹丸ちゃん
    逆に食べない理由が思いつかないのだ
    ピーちゃんが好きなだけ食べていいって
    言ってるのに



   倫花
    うん、それはそうだけど……
    大丈夫? 桃ちゃん



   桃
    構わない
    どうせ私には使い道がない



   満腹丸ちゃん
    んでは遠慮なく~
    いっただっきまーす!
    なのだ!



   乱花
    いたいた!
    お姉ちゃん
    九頭竜を連れ戻したんだ



   倫花
    乱花ちゃん!
    お疲れさま



   乱花
    で、どんな状況なの?
    九頭竜のパートナーは決まった?



   桃
    私のパートナーなら
    そこにいる



   満腹丸ちゃん
    はぐはぐはぐっ!
    ん~っ、美味しいのだ!

    この瞬間のために
    生きてるってかんじですなあ!

    そんじゃ、今度はメニューの
    二段目をぜ~んぶいってみるのだ!



   乱花
    ええええっ
    九頭竜と満腹丸が組むの?



   桃
    他にいなかったんだから
    仕方がないだろう



   乱花
    満腹丸と定期戦に出るのか
    どうなるのかな
    全然予想できないけど



   桃
    それも、もうどうでもいい



   乱花
    へ?
    どういうこと?

    私がいない間に何があったわけ?



   倫花
    それがね……



   乱花
    ヴァイオラに続いて
    猪名川にまでコテンパンにされたわけか

    それは九頭竜じゃなくても
    ちょっと自信なくすかも



   倫花
    でもマナちゃん
    すごく強かったのよ



   乱花
    そう言われると興味が湧くな
    拳を交えてみたくなってきた



   桃
    定期戦ではせいぜい
    気をつけることだな

    猪名川は、見逃してやるから
    逃げろと言った



   乱花
    うっは
    マジでそんなこと言われたの?
    えげつないなぁ、猪名川のヤツ

    それで九頭竜はしょんぼりして
    島から逃げ出そうって?
    らしくないなぁ



   桃
    何とでも言え
    戦場はどこにでもあるんだ
    世界中の至る所に

     ※ 半分自棄になっている



   乱花
    じゃあここだっていいじゃない

    九頭竜の言う戦場てのは
    気分で選ぶものなわけ?



   桃
    ふざけるなよ、神楽坂乱花!
    お前に私の何が分かるんだ!

    私は生まれてからずっと
    戦場で……ぐっ
    また頭痛が……

     ※ 自分の気持ちを人に話そうとしているのは、満腹丸との会話以来



   倫花
    桃ちゃん!

    乱花ちゃん、桃ちゃんを
    煽るのはやめなさい

    今はどうやって定期戦を
    乗り切るかって話でしょう

    桃ちゃんだけの問題じゃないんだよ?
    私たちだって状況は同じなんだから



   乱花
    同じじゃないでしょ
    私はパートナーを信頼してるもの

    お姉ちゃんのためなら
    ヴァイオラだろうが月影だろうが
    ぶっ飛ばしてやる

    それに、いくら対策を考えたって
    肝心の九頭竜がどうでもいいなんて
    言ってるんじゃ意味ないんじゃない?



   倫花
    う~ん、どうしたらいいのかな……



   満腹丸ちゃん
    あ~~~~~っ!!!!



   倫花
    うわ、びっくりした!
    どうしたの?



   満腹丸ちゃん
    お代わりしようと思ったら
    ピーちゃんのポイントが
    なくなってしまったのだ……



   桃
    もう使い果たしたのか!?



   満腹丸ちゃん
    普段は食べられないような
    おセレブな料理を注文したら
    あっという間に……ぐすっ

    まんぷくまるちゃんも
    もうポイントは残ってないのだ
    どうしよう?



   乱花
    どうしようったって
    どうしようもないよ



   倫花
    私たちも、あんまりポイント
    残ってないんだよね



   満腹丸ちゃん
    かくなる上は……とうっ!



   倫花
    へっ?
    きゃあああああああああ!!



   満腹丸ちゃん
    りんちゃんを食べさせてもらうのだ!
    はふはふ



   倫花
    やっ、満腹丸ちゃん!?
    そこはちょっと、はあんっ!
    ダメだってば!



   乱花
    わあっ!
    お姉ちゃんを放せ!



   満腹丸ちゃん
    にゅにゅにゅ!
    かじらせろとは言わないのだ

    なめるだけ!
    ちょっとなめるだけだから!



   倫花
    やっ、くすぐったい!
    あはははははははは!



   満腹丸ちゃん
    ぺろぺろさせてください
    ぺろぺろさせてください



   桃
    お、おい
    これはいいのか?

    ちょっと破廉恥じゃないか?
    うわ、そんなところまで!
    わああ……



   乱花
    はーなーれーろー!
    この変態丸!!



   倫花
    ひゃっ!?
    どこを触ってるの!?
    ダメダメ、ダメだよぉ!



   満腹丸ちゃん
    お肉を揉めば揉むほど
    VR-ウイルスに対する
    耐性が増すと聞きました!



   桃
    そ、そうなのか?
    私が求めていた戦いとは
    もしかしてああいう……



   乱花
    デタラメに決まってるでしょ!
    騙されんなっつの!

    私だってそんな
    うらやましいこと
    したことないのに!



   倫花
    はっ、あ……
    ダメ、満腹丸ちゃん
    それ以上はダメーっ!



   乱花
    いい加減にしろーっ!



   満腹丸ちゃん
    きゅうううう……



   倫花
    わぁぁぁん!
    怖かったよーっ!

    満腹丸ちゃん
    目が本気なんだもの……



   乱花
    私の目が黒い内は
    お姉ちゃんに指一本
    触れさせないんだから!



   満腹丸ちゃん
    じゃあじゃあ
    もうぺろぺろしないから
    お願いがあるのだ!



   倫花
    お願い?
    どんな?



   満腹丸ちゃん
    まんぷくまるちゃんと
    戦うのだ!



   倫花
    え? 実戦訓練ってこと?
    なんでそんなことしたいの?
    余計おなかが減るんじゃない?



   満腹丸ちゃん
    つべこべ言わずに戦うのだ
    それとも、負けるのが怖いのだ?



   乱花
    おっ
    いっちょ前に煽るじゃんか

    受けて立つよ
    私たちが戦うことは治療にもなるんだし



   倫花
    私もぺろぺろされないなら
    実戦訓練してもいいけど



   満腹丸ちゃん
    ピーちゃんも構わないのだ?



   桃
    ああ、好きにしろ



   満腹丸ちゃん
    では、れっつ・ばとる!
    なのだ!




  6-B-後

   乱花
    うっそでしょ
    満腹丸ってこんなに強かったんだ……



   倫花
    完全に飲まれてたね
    私たち……



   満腹丸ちゃん
    さあて!
    今ので何ポイント貯まったかな?
    えっちゃ~ん!!



   越後屋
    毎度!
    越後屋だよん!



   満腹丸ちゃん
    今ので貯まったポイントを
    ぜんぶ食べ物に換えて欲しいのだ!



   越後屋
    食事の方は拠点に
    用意しておけばいいかな



   満腹丸ちゃん
    それでいいのだ



   越後屋
    あいあい
    毎度あり!



   満腹丸ちゃん
    さー、戻ってごはんの続きなのだ!



   桃
    満腹丸
    ひとつ聞かせてくれないか



   満腹丸ちゃん
    何なのだ?



   桃
    神楽坂と戦いたいと
    言い出したのは、ポイントを貯めて
    ごはんを食べるためだったのか?



   満腹丸ちゃん
    そうですけどなにか?



   乱花
    ええええ
    それだけのために戦ったの!?



   倫花
    でも、そういうのってありなのかな

    ヴァルキリーが二組いたら
    無限にポイントが稼げることにならない?



   乱花
    おお、そうか!
    お姉ちゃん、頭いいね!



   理事長
    厳密に言うと
    アウトなんだけどね~



   満腹丸ちゃん
    お、理事長せんせ~!
    戦ってポイントを稼ぐのはダメなのだ?



   理事長
    倫花さんが言ったみたいに
    不正が可能になっちゃうでしょう



   満腹丸ちゃん
    不正なんてしてないのだ
    まんぷくまるちゃんは、ごはんの
    ために全力で戦ったのだ



   理事長
    そうね、戦闘データからも
    あなたたちが本気で戦ったことは
    疑いようがないわ



   満腹丸ちゃん
    じゃあ?



   理事長
    そのポイントは、正規のものよ
    好きなように使いなさい



   満腹丸ちゃん
    やったー!
    ありがとうなのだ
    理事長せんせ~!



   理事長
    桃さん
    このあとのごはんをじっくり味わいなさい



   桃
    ……何が言いたい?



   理事長
    そしてマナさんや満腹丸さんが
    どういう想いでドライヴしたか
    よく考えてみて

    戦乙女は胸に秘めた想いを
    武器にして戦うのよ



   桃
    胸に秘めた想い……



   理事長
    それじゃあね



   桃
    なあ、満腹丸
    お前はどんな想いを秘めているんだ?



   満腹丸ちゃん
    まんぷくまるちゃんは
    この島が大好きなのだ

    なぜなら戦って
    美味しいごはんを食べられるから!



   桃
    それだけ?



   満腹丸ちゃん
    それだけ



   桃
    そうか、それだけか
    ふふ

     ※ 初めて他者に気を許したことが、笑顔に顕われている



   満腹丸ちゃん
    お?
    ピーちゃん笑った?



   桃
    笑うしかないだろう
    何のために戦うか悩んでいた
    自分がバカらしくなった



   満腹丸ちゃん
    よくわかりませんが
    ピーちゃんが楽しそうで何よりなのだ



   桃
    おかげで少し気が楽になった

    私がどこから来たのか
    何のために戦うのかなんて
    どうでもいいのかも知れない

    どこにいても
    私は戦うことしかできないんだしな……

    だったらいっそのこと
    宴会のためのポイントでも貯めてみようか



   乱花
    え、なにそれ
    どういう路線変更なわけ?



   桃
    冗談だ
    真に受けるな



   乱花
    なんだ、冗談か
    本気にしちゃった
    あはは

    って、お姉ちゃん
    たいへんだよ、たいへん!
    九頭竜が冗談言った!



   倫花
    いいんじゃない?
    桃ちゃんが冗談くらい言っても



   乱花
    だって全然おもしろくなかったし



   桃
    ちっ
    センスがないな、神楽坂乱花
    死にたいのか?



   乱花
    やだなー
    それも冗談でしょ?



   桃
    いいや本気だ



   乱花
    うわっ、危なっ!
    お姉ちゃん、九頭竜に何とか言ってやってよ!



   倫花
    うふふ



   満腹丸ちゃん
    さー
    早く戻って、みんなで
    ごはんを食べるのだ!





 Drive07. 激突! 学内定期戦


  7-A-前

   桃

    (独白開始)

    身体にこびりついた
    硝煙の匂い……

    吸い込んだ熱風が喉を焼く
    口の中に広がる鉄の味……

    血にまみれた手は
    乾く暇もない

    そうだ、あの戦場だ
    私は戦場で生まれた……

    戦場で生き残るには戦うしかない
    運良く、私にはその才能があった

    戦わなくてはならない
    だから私は戦い続けた

    V-ウイルス?
    なんだそれは

    不治の病?
    私がそのウイルスに感染しているというのか?

    そうか……
    でも、そのウイルスがあれば
    強くなれるんだろう?

    なら問題ない
    治療も必要ない

    次の戦場はどこだ?
    皆殺しにしてやる

    私が戦わなくちゃ
    私が敵を倒さなくちゃ

    ウイルスの力を使って
    私は更なる戦いを求めた

    ただひたすら戦って
    戦って、戦い続けて――

    私はなんのために
    戦っていたのかすら
    忘れてしまった

    そうして気がついた時には
    ビクニの港に立っていたんだ――

    (独白終了)



   ゴウザンゼ
    それでは今期の定期戦を始めます



   (浜辺にて)

   倫花
    ついに定期戦が始まるんだね
    どんな戦いになるんだろう



   乱花
    いつもと同じだよ
    相手が誰でもぶっ飛ばすだけだし



   ゴウザンゼ
    と、その前に
    理事長から重大な発表があります



   倫花
    重大な発表?
    なんだろう



   理事長
    五期生のみなさん
    おはようございます

    発表というのは
    他でもありません

    先日提出してもらった定期戦の
    パートナー申請のことだけど

    あれ、全部ナシにします
    ごめんね~



   乱花
    え~っ!
    なにそれ!



   理事長
    今回の定期戦では
    無作為の抽出によってペアを決めます

     ※ 当然意図的なもの




   乱花
    ムサクイ?
    どういうこと?



   理事長
    今からみなさんに封筒を配ります

    中に番号が書いてある札が入って
    いるから、同じ番号の人同士が
    定期戦でのペアになります



   倫花
    くじでランダムに組む相手を
    決めるってことみたいね



   乱花
    それじゃあ私、お姉ちゃんと
    組めないの!?

    そんなの聞いてないよ!!



   ゴウザンゼ
    お静かに!

    ここビクニにおいて
    理事長の決定は絶対なのです

    従わないというのであれば
    定期戦の参加資格を剥奪します
    よろしくて?



   乱花
    はいっ!
    はいはいはーい!
    しつもーん!!



   理事長
    何かしら、神楽坂乱花さん



   乱花
    せめて、どうして急にこんなことになったのか
    理由を教えて下さい!



   倫花
    ら、乱花ちゃん!



   乱花
    理由の説明もなしに
    ただ従えじゃ納得できません!

     ※ 反旗を翻す前振り



   理事長
    いいでしょう
    よく聞きなさい



   倫花

    (独白開始)

    でも、乱花ちゃんじゃなくても
    気になるよね

    私たちヴァルキリーにとって
    誰をパートナーにするかは
    一番大事なこと……

    その大事なことを
    当日になって突然変更するんだもの
    とてつもない理由が隠されているはず

    一体どんな理由が……?

    (独白終了)

     ※ やはり鋭い



   理事長
    その方が面白いと思って

     ※ ヴァルキリーはヴァルキリーの為に生きる。

       それを身に付けさせるには、固定のパートナーだけでは不十分。と理事長(グンダリ)は考えているのだろう



   倫花
    ……はい?



   理事長
    以上よ



   乱花
    それだけ!?



   理事長
    それだけ
    あと、みんながびっくりするだろうな~って



   乱花
    そ、そんなの納得できないよ!



   ゴウザンゼ
    理由は説明しました

    その上で、あなた方が選べるのは
    従うか、脱落を認めるかの
    ふたつ……

    好きな方をお選びなさい



   乱花
    や、やるよ!!
    脱落なんて困るもん!

    こうなったら気合だ!
    気合でお姉ちゃんと同じ番号を引いてやる!



   倫花
    乱花ちゃん
    封筒が回ってきたよ



   乱花
    う~っ
    お姉ちゃんと同じ番号……
    お姉ちゃんと同じ番号……

    えいっ!
    これだっ!



   理事長
    それでは全員封筒は行き渡りましたか?
    行き渡ったのでしたら各自開封をしてください



   女の子
    すいません61番の人はいませんかぁ



   女の子
    24番!24番!いますかー!



   理事長
    試合は本日13時より行います

    それまで各自パートナーと話し合って
    作戦を立てるとか絆を深めるとかに
    費やしてくださいね

    もちろん食事と休憩もしっかり取ること
    以上よ



   乱花
    お姉ちゃんっ!
    何番だった!?

    私は41番だったよ!
    当然お姉ちゃんも41番だよね?
    他の番号なんてありえないし!



   倫花
    う、うん、ちょっと待って
    今、封筒を開けるから

    (独白開始)

    パートナーは話しやすいコがいいな
    怖い人だったら困るなぁ……

    (独白終了)



   乱花
    何番!?



   倫花
    40番だね



   乱花
    ひとつ違い?
    ……うっそぉ



   倫花
    あはは
    そうそう上手くはいかないよ



   乱花
    気合が足りなかったか~
    どんどんやる気が失せてきたよ



   倫花
    ダメだよ、乱花ちゃん
    一生懸命やらなくちゃ

    パートナーのリセットは
    今回だけの特別ルールでしょ

    定期戦を乗り切れば
    また自由にペアを組めるんだから



   乱花
    そうだね
    分かってるんだけどさ
    う~~~~

    んじゃ私のパートナーを
    探しに行ってくるね



   倫花
    いってらっしゃい

    私も自分のパートナーを
    探さなくちゃ

   (食堂にて)


    うう、どうしよ~
    40番の人が見つからないよ~

    定期戦開始までに合流できなかったら
    棄権になっちゃう



   桃
    おまえが40番か?
    ……私もだ



   倫花
    桃ちゃん!!
    じゃあ私たちでペアを組むんだね!



   桃
    そういうことになったらしい



   倫花
    よかったぁ
    合流できて



   桃
    ……その、あれだ



   倫花
    なに?



   桃
    私のような面倒な相手と
    組むことになって災難だったな



   倫花
    災難?
    どうして?



   桃
    私は、私が戦う目的を
    まだ見出せていない

    ただ思い出せない過去の記憶と
    漠然と戦いたいという想いが
    胸の中にあるだけだ

    つまらないプライドにこだわって
    お前たちには、その、迷惑をかけた

    そんな相手と組むのは
    誰だって面倒だろう?

     ※ 自分の思いを遂に人に話した



   倫花
    全然そんなことないよ
    むしろ嬉しいくらい



   桃
    嬉しい?
    どうしてだ



   倫花
    桃ちゃんは、定期戦を勝ち抜いて
    ビクニに残るって決めたんでしょ?



   桃
    満腹丸やお前たちを見ていたら
    つまらないプライドにこだわっていた自分が
    バカバカしくなったんだ

    今は思い出せないが
    私がここへ来たのには理由があるはずだ

    戦う前から理由をつけて
    あきらめるのは間違ってる

    私は、私から逃げたくない
    そう思った



   倫花
    今の話を聞ければ十分だよ
    私たちはお互いのために戦える
    そう思わない?


   桃
    いいのか?
    私がパートナーで



   倫花
    もちろん、こちらこそよろしくね
    桃ちゃん

    それに戦いに関しては
    私より桃ちゃんの方が何倍も経験あると思うし

    桃ちゃんと組めて、むしろ
    私の方がラッキーだったかな~
    なんてね



   桃
    ありがとう
 
     ※ この一言をマナに対しても掛けてあげられていたなら……



   倫花
    え? なに?
    良く聞こえなかったよ



   桃
    わ、私の足を引っ張るなと
    そう言ったんだ



   倫花
    うん!
    一緒にがんばろう!



   (学校にて)

   乱花
    はあぁぁぁ
    そう言えば今日は星座占いも最下位だった



   マナ
    何が言いたいんですか?



   乱花
    お姉ちゃんと組みたかったよう~
    勝利のキメポーズまで考えてたのに



   マナ
    言っておきますけど
    私、そんなのやりませんからね



   乱花
    つまんないな
    お姉ちゃんなら絶対にノってくれたのに

    よりにもよって
    なんで猪名川が41番なわけ?



   マナ
    その言葉、そっくりそのままお返しします
    どうして乱花さんが41番なんですか

    予定ではヴァイオラさんと組んで
    ばっちりがっちり評価を上げるつもり
    だったのに……



   乱花
    あーあー
    私がパートナーで悪うござんしたね



   マナ
    ふう、こんな風に愚痴を
    投げつけ合っていても何も始りません

    乱花さん
    勝ち残る気はあるんでしょ?



   乱花
    当たり前でしょ



   マナ
    私だって、脱落する訳にはいかないんです

    プランBが必要ですね
    共闘しませんか?



   乱花
    ま、悪いのは自分のクジ運だもんね
    猪名川自身に恨みがあるわけじゃなし
    ここは前向きに検討しよっか

    私のバトルスタイルが拳闘だけにね!



   マナ
    ……さて
    真面目に作戦を考えましょう



   乱花
    あれっ?
    面白くなかった?
    あれー?



   マナ
    先が思いやられますね……



   (食堂にて)

   倫花
    私も桃ちゃんも
    武器の間合いはそれほど変わらないのか……



   桃
    弓や銃と比べたら
    差はあってなきに等しいな



   倫花
    相手が飛び道具系だと
    まずいよね



   桃
    対処のしようはある
    通常クラスの連中は、ほとんどが
    戦闘については素人らしい



   倫花
    さすがは桃ちゃん
    頼りになるね



   ヴァイオラ
    下手な考え休むに似たりって
    言葉、知ってる?



   倫花
    あ、ヴァイオラちゃん



   ヴァイオラ
    あなたたちのようなザコが
    どんな作戦を立てようと
    無駄なあがきという意味よ



   桃
    用がないならさっさと立ち去れ



   ヴァイオラ
    あら、せっかく頼まれて伝言を
    持ってきたのに、つれないわね



   桃
    伝言?



   ヴァイオラ
    私のパートナーからの伝言よ
    約束したのに一緒に組めなくて
    ごめんなさいなのだ――だそうよ



   倫花
    なのだ……?
    もしかして!



   桃
    お前が満腹丸のパートナーになったのか

    あいつはどこにいる?
    どうして直接言いに来ない



   ヴァイオラ
    バツが悪くて
    顔を合わせ辛いんでしょ
    察してあげなさいな

    パートナーを組むという
    約束を破ってしまったのを
    気にしてるようだったし

    その上で、定期戦で私たちと
    対戦するようなことがあれば
    どうしたって勝ってしまうものね



   倫花
    自分達が勝つって
    そんなのやってみなきゃ分からないじゃない



   ヴァイオラ
    いいえ、断言するわ
    あなたたちでは、私と満腹の
    足元にも及ばない



   桃
    ……くっ



   ヴァイオラ
    今回のことは満腹のせいじゃ
    ないんだし、許してあげなさい
    それじゃあね



   倫花
    ちょ、ちょっと待って!

    行っちゃった
    すごい自信だったね



   桃
    言うだけのことはある
    あいつは強い



   倫花
    ますます負けられない
    戦いになってきたね



   桃
    どういうことだ?



   倫花
    もし桃ちゃんが負けたりしたら
    満腹丸ちゃん、きっともっと
    気にしちゃうでしょう?

    ※ 他者の為にも戦う倫花の姿は、桃に変革をもたらす。
      そこに理事長の狙いがある
      自分達の為だけに戦っていた乱花も同じこと




   桃
    お前は、私や満腹丸のために
    戦うというのか?



   倫花
    もちろん自分のためでもあるけど
    それが他の誰かのためでもあるなら
    もっとがんばれると思わない?



   桃
    他の誰かのために戦う、か……
    ふふっ



   倫花
    わ、私、おかしなこと言った?



   桃
    いや、いいんだ

    とにかく相手が誰だろうが
    負けるわけにはいかない

    時間はあまりないが
    あらゆる状況を考慮して
    対策を立てておこう



   倫花
    うんっ!



   (港湾地区にて)

   理事長
    それでは定期戦の組み合わせを
    順次発表していきます

    まずは41番のペア



   乱花
    おっ、私たちが一番手だって
    いつ呼ばれるか緊張しなくて言い分
    ラッキーかも



   マナ
    …………



   乱花
    さーて、相手は誰かな
    誰でも一緒だけどね!



   理事長
    対戦相手は――40番のペア



   乱花
    40番?
    あれ、40番って……

    お、お、お姉ちゃん!?



   倫花
    やっほー、乱花ちゃん
    お手柔らかにね



   乱花
    えっ? ええっ?
    私とお姉ちゃんが戦うの?
    そんなのっておかしくない?



   理事長
    いいえ、ペアも対戦の組み合わせも
    全てクジによるランダムな抽選の結果よ

     ※ これもウソ




   マナ
    ランダムですって?
    どうだか……

     ※ マナもよく見ている



   乱花
    私はイヤだよ!
    お姉ちゃんと戦うぐらいなら
    死んだ方がマシだもん!

    (これもカオスルートへの布石)




   マナ
    乱花さん!?
    それでは私が困ります!



   倫花
    聞き分けのないことを
    言わないのよ、乱花ちゃん

    私と一緒じゃなきゃ戦えない
    私相手じゃ戦えないなんて
    そんなに弱い子じゃないはず

    私が相手でもちゃんと戦えるって
    証明して見せなさい

    この先、いつまでも一緒には
    いられないかも知れないんだもの



   乱花
    う……
    わかったよ
    お姉ちゃん



   桃
    私がリブレイターをやる
    妹が相手じゃ戦いづらいだろ

    あ、いや
    妹が相手だからと言って
    手加減をされても困る

     ※ 始めて他者を気遣った桃。無自覚だが、
       マナとのドライヴによる好影響もあるかもしれない




   倫花
    ……ありがとう
    じゃあ桃ちゃんにお任せしようかな



   桃
    安心しろ、倫花
    お前の気持ちを、あいつらに
    きっと伝えてみせる

     ※ この辺りからはもはや聖人となっている



   倫花
    桃ちゃん!
    今、わたしのこと
    名前で呼んでくれた!?



   桃
    い、いちいち長ったらしい
    苗字で呼ぶのが面倒だっただけだ
    それより戦いに集中しろ

    行くぞ、倫花



   倫花
    うんっ!



   理事長
    それでは定期戦
    第一試合を開始します!




  7-A-後

   桃
    こんなところか



   マナ
    あなたたち、いつの間に
    訓練をしたの?



   桃
    訓練?
    そんなものはしていない

    倫花とドライヴしたのは
    今回が初めてだ



   マナ
    そんな! ありえません!
    初めてのドライヴで、あれほどの
    シンクロができるなんて!

     ※ 自分とは上手くいかなかったことを思い出し、少しショックを受けている



   乱花
    行こう、猪名川
    負けは負けだよ



   マナ
    でも乱花さん……



   乱花
    定期戦はこれで終わりって
    わけじゃないんだし
    次の対戦の準備もしなくちゃ

    このまま負けっぱなしって
    わけにはいかないでしょ?

    お姉ちゃんが敵じゃなければ
    私は誰にも負けないんだ……

    評価は他で取り戻すよ
    だから行こう、猪名川

     ※ 乱花の変化にもスポットが当たり出す



   マナ
    わ、わかりました
    では失礼します



   倫花
    乱花ちゃん!



   桃
    心配ない
    お前の気持ちは乱花にも分かっているはずだ

    負けという事実が気に食わなくて
    拗ねてるだけだろう



   倫花
    だといいんだけど……



   桃
    戦っている最中
    ずっと不思議な感覚に包まれていた

    自分の知らない力が湧いて来るような
    そんな感覚だ

     ※ そのきっかけを与えたのは、マナの優しさがほとんどだろう。
       マナが撒いた愛情の種に、満腹丸と乱花を含め倫花が水を与えたような形になっている。
       日の光は、理事長のヴァルキリー全てを想う気持ちか




   倫花
    私は、桃ちゃんが私のために
    がんばってくれてるのを感じてたよ

    あの瞬間、私たちは確かに
    お互いを思いやる気持ちで
    結ばれてたよね



   桃
    信頼……というものか



   倫花
    桃ちゃん、私はね
    戦う力なんて欲しくないんだ
    普通に暮らしたいだけなの

    だからVR-ウイルスなんて
    いらないって、ずっと思ってたんだ

    でもヴァルキリードライヴの中で
    お互いの気持ちが通じ合えるなら
    悪いことばかりじゃないのかもね

    相手の気持ちなんて、普通だったら
    いくら言葉を重ねても信じられたりしないもの



   桃
    ……そうかも知れないな
    自分以外の誰かのために戦うと
    いうのも案外悪い気分じゃない

    少しずつだけど
    この島で自分がどうすべきか
    どう戦うべきか分かった気がする

    ※ この想いを抱かせる事こそが、理事長の狙い




   倫花
    ホント!?
    良かったね!
    桃ちゃん



   桃
    気を緩めるなよ、倫花
    定期戦は、まだ終わりじゃない
    まずは身体を休めるぞ



   倫花
    うん!
    次もがんばろうね、桃ちゃん!




  7-B-前

   マナ
    ふう、困りましたね
    初戦で負けるなんて想定外です

    どうしたものか……



   ヴァイオラ
    惨めなものね
    副筆頭さん

     ※ この辺りからマナに対する風当たりが強くなっていく



   マナ
    ヴァ、ヴァイオラさん!



   ヴァイオラ
    こんなんじゃ副筆頭の座どころか
    ビクニの居残りもヤバいんじゃない?



   マナ
    評価は他で取り返します

    初戦で負けたのだって
    ペアの再抽選が原因です



   ヴァイオラ
    パートナーのせいだと?



   マナ
    そ、そうは言ってません

    でも!
    一緒に育った姉妹が相手だなんて
    誰だって動揺するに決まってます



   ヴァイオラ
    ま、どんな言い訳をしても
    負けは負けだけど

     ※ 実際、乱花は倫花相手に本気は出せないのだから、
       やはりマナは不利だった




   マナ
    乱花さんも、倫花さん以外が
    相手なら負けないと言っています
    だから――



   ヴァイオラ
    だから?



   マナ
    私はあきらめません
    この島で生き残ってみせます

    ……どんな手を使ってでも



   ヴァイオラ
    うふふ
    あなたのその目、嫌いじゃないわ

    小春を倒せとは言わないけれど
    露払いくらいは役に立ってね
    じゃあね



   マナ
    この島を追い出されたら
    私には何もないんです
    帰る場所も、頼れる人も……

    ヴァルキリーの力こそ
    私がこの世界で生きるために
    天が与えてくれたチャンス

    ここで脱落したら
    何もかも失ってしまう

    まずは残りの対戦で
    きっちりと評価を残さなくてはなりませんね

     ※ 天涯孤独? 居場所を求める気持ちが、
      島での他者(ヴァルキリー)の為に生きる事へと繋がり、
      それは守護者としての資質と成り得る



   (食堂にて)

   桃
    食事は消化の良いものにしておけ

    すぐにエネルギーに変わる
    炭水化物を多く取るように
    水分補給も忘れるなよ

    食後のデザートに
    甘いものを摂っておくのもいいな



   倫花
    ふむふむ
    だったら、おうどんにしようかな



   満腹丸ちゃん
    じゃあ、まんぷくまるちゃんは
    バケツプリンをお願いするのだ!



   桃
    ま、満腹丸



   満腹丸ちゃん
    バケツプリンを作る時は
    自重をギリギリ支えられる
    固さの見極めが大事なのだ

    固すぎると舌触りが悪くなるし
    柔らかすぎると自分の重さで
    潰れてしまって、あちゃーなのだ



   倫花
    なるほど~



   桃
    感心するな
    何の話だ?



   満腹丸ちゃん
    そう!
    ピーちゃんの勝利をお祝いしに来たのだ!



   桃
    ……そうか
    わざわざすまなかったな

     ※ マナが持ち掛けた祝勝会が思い出される



   満腹丸ちゃん
    お?
    おお?



   桃
    な、なんだ
    私の顔をジロジロ見るな



   満腹丸ちゃん
    ピーちゃん
    何かあった?



   桃
    何かって何だ
    何もない



   満腹丸ちゃん
    昨日までのピーちゃんなら
    お祝いをしても知らんぷりだったのだ



   桃
    そんなことは頼んでない
    殺されたいのか?



   満腹丸ちゃん
    なーんつって!



   倫花
    確かにそうかもね~
    前は槍の切っ先みたいに
    触ったら切れそうだったもんね



   満腹丸ちゃん
    ほほう、やっぱりなのだ
    ピーちゃん、ちょっと可愛くなりました?



   桃
    か、可愛くなんかない!
    倫花も満腹丸も、私をバカにしてるのか?

    それこそ殺すぞ!



   倫花
    ……ぷっ
    あははははは!



   桃
    なんで笑う!



   倫花
    だって、耳まで真っ赤にしながら
    殺すぞなんて言われても、説得力ないよね



   満腹丸ちゃん
    今の表情でごはん三杯はいけるのだ
    写真に撮っておけば良かった
    惜しいことをしたのだ



   桃
    お、お、お前ら……



   満腹丸ちゃん
    まーまー
    パートナーが変更になっちゃって
    ちょっと心配してたんだけど

    取り越し苦労の腹減り損だったようで
    安心したのだ



   桃
    そういうお前の方は
    どうだったんだ?

    ――と、聞くまでもなかったか
    ヴァイオラと組んだんだったな



   満腹丸ちゃん
    ばいおちゃんに任せておけば
    寝てる間に対戦が終わってるのだ



   倫花
    やっぱりヴァイオラちゃんって
    そんなに強いんだ……



   桃
    誰が相手でも全力を尽くすだけだ
    そうだろう? 倫花



   倫花
    う、うん
    自分が恥ずかしくなるような
    戦いだけはしないつもりだよ



   桃
    それでいい

    現実的な話をすれば
    ビクニを追い出されるような
    評価をつけられるのはマズイが

    そんなお粗末な戦いにはならない
    何故なら、私がいるからな



   満腹丸ちゃん
    ……やっぱりピーちゃんは
    昨日よりも少し変わったのだ



   桃
    お、おい
    話を蒸し返すな
    死にたいのか



   満腹丸ちゃん
    ご、ごめんなのだ!
    でもまんぷくまるちゃんは
    それがちょっと嬉しいのだ



   桃
    ……まあいい
    とにかく次の対戦までに
    栄養補給と休息だ

    良く噛んで食べろ
    それとプリンはやめておけ



   満腹丸ちゃん
    え~
    じゃあ何を食べればいいのだ?



   桃
    戦闘前だからな
    パンや米、卵を摂るといい
    バナナなんかもお勧めだ



   満腹丸ちゃん
    じゃあバナナ丼にするのだ



   倫花
    バナナ丼!?



   満腹丸ちゃん
    バナナを甘辛いタレで煮て~
    卵でとじて~、ほかほかの丼めしに
    ぶっかけるのだ



   桃
    栄養学的には間違ってないが



   満腹丸ちゃん
    おばちゃーん!
    バナナ丼みっつなのだ!



   倫花
    みっつ?
    みっつってまさか……



   満腹丸ちゃん
    ん! 任せといて!
    まんぷくまるちゃんのおごりなのだ!

    バナナ丼で栄養補給して
    お互い二回戦に臨むのだ!



   桃
    お、おい
    私も食べるのか?
    そのバナナ丼を



   倫花
    この流れで断れないよ
    それに栄養学的に間違ってないって
    言ったのは桃ちゃんだよ



   桃
    そ、それはそうだが



   倫花
    ありがとう、満腹丸ちゃん
    あは、あははは



   ゴウザンゼ
    二回戦は、ここ自然エリアで行います
    思う存分に戦いなさい



   倫花
    戦うフィールドが変わるんだ
    そこまで考えてなかったな



   ヴァイオラ
    さて、二回戦ね
    負ける覚悟はできていて?



   倫花
    でも対戦の組み合わせは
    ランダムのはずでしょ?

    私たちが当たるとは限らないよ



   ヴァイオラ
    相変わらずおつむの方は空っぽのようね

    ここはビクニよ?
    V-ウイルスの研究のためなら
    なんだってするわ

    特に変異種であるVR-ウイルスは
    ビクニの専売特許ですものね

    研究したくてウズウズしているはずよ



   倫花
    どういうこと?



   ヴァイオラ
    パートナーの再抽選の結果を
    見れば、クジが操作されていることは
    バカでも気付くでしょう

    VR-ウイルスの保持者は
    VR-ウイルスの保持者同士
    組まされているのだから



   倫花
    あ、確かに……



   桃
    貴様、何が言いたい?



   ヴァイオラ
    次の対戦で、私たちが当たる
    可能性がぐっと高まったって話

    負けた時の言い訳を
    用意しておくことね



   倫花
    ……私たちは負けないよ
    たとえヴァイオラちゃんが相手でも



   ヴァイオラ
    なんですって?
    一度勝ったくらいで
    舞い上がっているのかしら?



   倫花
    乱花ちゃんを下してまで
    先へ進んだんだもの

    お姉ちゃんは強いんだってことを
    ちゃんと見せないとね



   ヴァイオラ
    相変わらず
    ゴミの言うことは理解できないわ

    満腹!



   ゴウザンゼ
    では第二回戦、第一試合
    組み合わせを発表するわ

    40番のペア!
    対するは58番のペア!


   満腹丸ちゃん
    58番は
    まんぷくまるちゃんたちの番号なのだ



   倫花
    40番は私たちだよ……



   ヴァイオラ
    ほらね?

    でも第一試合に持ってくるのは
    いくら何でもあからさますぎね

    満腹



   満腹丸ちゃん
    あい



   ヴァイオラ
    次の試合はあなたが
    リブレイターをやりなさい



   満腹丸ちゃん
    ばいおちゃんは
    お休みなのだ?



   ヴァイオラ
    私の戦闘データを好き放題
    取れると思われるのは
    ちょっとシャクじゃない?

    私の強さなら、一回戦で
    十分示したでしょうに

    このヴァイオラ様はお安くないって
    ことを、ビクニの連中に分からせてあげなきゃ



   満腹丸ちゃん
    あいあいあさー!
    では、まんぷくまるちゃんが
    お役目つかまつりますのだ



   ヴァイオラ
    せいぜいポイントを稼いで
    バケツプリンでもタライ杏仁豆腐でも
    好きなものをお食べなさい

    それじゃ試合でね



   倫花
    こっちは私が出るよ



   桃
    いいだろう
    任せた、倫花



   倫花
    ふう……
    相手は満腹丸ちゃんとヴァイオラちゃんか

    一筋縄じゃいかなそうだね



   桃
    私を刃として振るうんだ
    無様な戦いは許さないぞ



   倫花
    わかってる
    私たちの未来のためにも
    負けるわけにはいかないよ



   桃
    それでいい
    倫花の思う通りに戦え



   倫花
    うん
    わかった



   ゴウザンゼ
    それでは二回戦、第一試合
    はじめなさい!




  7-B-後

   倫花
    わあ、賑やかだね~!



   マナ
    定期戦のあとはビーチを開放して
    自由に遊べるようにしているそうですよ



   倫花
    へえ
    屋台とか海の家も出てるし
    気晴らしにはいいかもね



   満腹丸ちゃん
    何を食べようかな
    全部食べるけど!



   桃
    お、おい
    どうして私が付き合わなければならないんだ?



   マナ
    勝ち逃げは許しませんよ

    今日の払いは、倫花さんと
    桃さんのおごりですからね



   桃
    どうしてそうなる



   乱花
    私たちに勝って得たポイントだもん
    当然でしょ



   桃
    それはそうだが……
    いや、そうなのか?



   乱花
    つーか、私は納得してないんだよね
    一回戦で負けたのも猪名川せいだしさ



   マナ
    はあ?
    何を言ってるんですか?
    乱花さんのせいでしょう



   乱花
    まあどっちでもいいけどさ
    二回戦では、いい戦いができたと思うよ

    あれならそこそこの評価を
    もらえるんじゃないかな



   マナ
    まあ、そうですね
    二回戦は乱花さんもがんばりました



   乱花
    なんで上から目線なのさ……

    ていうかさ
    九頭竜の水着、きわどくない?
    すっごいエロいんですけど



   倫花
    ねっねっ
    似合ってるでしょ?
    私が選んだんだ



   マナ
    なかなかですね
    うまくプロデュースすれば
    お金が取れそうですよ



   満腹丸ちゃん
    モモも肩ロースも
    おいしそうなのだ~
    じゅるり



   桃
    お、お前ら
    私をバカにしているな!?

    そこに並んで歯を食いしばれ!
    皆殺しにしてやる!



   ???
    騒がしいですね……
    何事ですか?



   倫花
    小春ちゃん!



   乱花
    レアキャラ発見!
    月影が遊んでるの初めて見た!



   小春
    対戦が早々に終わったので
    休ませてもらっています

    働く時は働く、休み時は休む
    メリハリをつけないと



   マナ
    あの、やっぱり定期戦は
    全勝だったんですか?



   小春
    勝ち負けは重要ではないでしょう
    評価されるのは戦闘の内容ですし
    それを決めるのは私ではありません

    成績が発表されるまで
    私も分からないんです



   乱花
    でも手応えって言うか
    あるじゃない?

    月影的にはどうだったの?



   小春
    もちろん全力を尽くしました
    手を抜くのは相手の方に失礼ですもの
    皆さんもそうでしょう?




   乱花
    ま、まあね



   倫花
    ねえ
    小春ちゃんも一緒に遊ばない?



   小春
    お誘いは嬉しいんですけど
    遠慮しておきます

    休むのも筆頭としての仕事なので



   倫花
    そっか
    筆頭さんって大変なんだね



   乱花
    とか言っちゃって
    ホントは定期戦でクタクタに
    疲れて動けないだけなんじゃないの?



   小春
    そうかも知れませんね
    うふふ



   マナ
    乱花さんの負けですね
    あの人には皮肉なんて通じません
    何しろ筆頭なんですから

    いずれ、私がその座を
    奪ってみせますけれど……
    ふふ、うふふふふ



   小春
    それより大丈夫なんですか?



   乱花
    大丈夫って
    なにが?



   小春
    満腹丸ちゃんさんが――



   満腹丸ちゃん
    うぐぐ
    早く何か食べないと、栄養不足で
    心臓が止まってしまうのだ……



   倫花
    わ、満腹丸ちゃんの口から
    魂がはみ出てる!
    ダメダメ!



   乱花
    何が食べたいの?
    焼きそば? イカ焼き?
    かき氷とかがいい?



   満腹丸ちゃん
    ぜ、ぜんぶ……
    あと焼きトウモロコシ……
    それとカレーライス~



   倫花
    えっとえっと
    焼きそばとカレーとなんだっけ?



   桃
    仕方ないな
    私が買ってきてやる

    戻ってくるまでに
    魂を口に押し込んでおけ
    いいな!

     ※ もはや完全に馴染んでいる



   乱花
    頼んだ、九頭竜!
    大至急だよ!



   マナ
    これじゃ息抜きどころじゃありませんね



   倫花
    でも私たちの初めての定期戦
    無事に終わったね



   マナ
    ビクニで暮らしていく
    自信みたいなものは
    得られたような気がします



   倫花
    そうだね
    ひと安心ってところかな



   小春
    リラックスするのはいいですけど
    気を緩めすぎないでくださいね

    定期戦はビクニでの生活の
    一環でしかないんですから

    ここでの暮らし全てが
    治療に繋がっているんです

    早くVR-ウイルスを治療できるよう
    みんなで一緒にがんばりましょう



   倫花
    うん、がんばろう!





 Drive08. 新たなる挑戦、そして戦線離脱


  8-A-前

   (学園前)

   倫花
    おはよう、マナちゃん
    明日から実戦訓練の再開だね



   マナ
    定期戦の振替休日を
    挟みましたからね



   倫花
    振替休日って言えばさ
    幼稚園の頃、遠足に行った次の日に
    お疲れ休みっていうのがあってね

    ある時の遠足で
    わたしは熱を出して行けなかったんだけど



   マナ
    それは残念でしたね



   倫花
    で、その次の日はお疲れ休みに
    なるんだけど、お母さんがお弁当を
    作ってくれたんだ

    お母さんと乱花ちゃんと一緒に
    家のお庭でお弁当を食べたのが
    わたし、すごく嬉しくて

    懐かしいな
    お母さん、どうしてるかな

    もう逢えないのかな



   マナ
    …………

     ※ マナの親は既に亡くなっている? あるいは絶縁状態?



   倫花
    あ、そろそろ教室に戻らなくちゃ

    マナちゃんは用事なんだよね
    私先に戻ってるね



   マナ
    ええ、気をつけて

    ……ふう



   (学園廊下にて)

   乱花
    はーあ
    2日も訓練がないと身体が鈍っちゃうね
    ふわぁぁああ……



   倫花
    乱花ちゃん
    あんまり大きな口を開けると
    小さな虫とか吸い込んじゃうよ



   乱花
    うえっ
    そ、そういうこと言わないでよ
    あくびはガマンするからさ



   倫花
    人前で口を開ける時には
    せめて手を口に当てるとかしなさい



   乱花
    はいはい
    気をつけます

    あれ、なんだろう?
    騒がしいな



   倫花
    廊下に人だかりができてるねぇ



   乱花
    掲示板になんか貼ってあるよ?
    なんだろう



   桃
    定期戦の成績が発表されたらしい



   倫花
    おはよう、桃ちゃん
    そうなんだ



   乱花
    今時、紙に書いて廊下に
    張り出すなんてヘンなの

    成績なんてメールで全員に
    ぱぱっと送ればいいのに



   桃
    相変わらず考えが浅いな
    倫花の妹



   乱花
    な、なによ、その呼び方
    私がお姉ちゃんの付属物みたいじゃない



   桃
    すまん
    名前が思い出せなかった

    いつまでも姉に心配をかけるなよ
    倫花の妹



   乱花
    九頭竜、まさか私の
    ポジションを狙ってるんじゃないでしょうね

    お姉ちゃんに取り入って
    パートナーの座に納まる気なんだ!

    そしたら立場を利用して
    お姉ちゃんのおっぱいいを揉んだり
    太ももを触る気だなっ!

    こんな風に!
    こんな風に!



   倫花
    ひゃんっ!
    ら、乱花ちゃん、そんな廊下で
    あっ、ダメだよ……



   桃
    いい加減にしろ



   乱花
    あだっ!
    何も殴ることないじゃんか
    いったぁ~



   桃
    こういうのをツッコミと言うんだろう?



   倫花
    ふぇ~ん、桃ちゃん
    助けてくれてありがとぉ~



   乱花
    わーっ!
    お姉ちゃんにくっつくな!
    お姉ちゃんは私のだぞ!



   桃
    甘ったれの妹のポジションなど
    興味はない

    だが倫花と組むのは
    考えてもいい



   倫花
    えっ?



   桃
    倫花の意向を無視してまで
    組むつもりはないさ

    当分は妹のお守りで
    忙しいだろうからな



   乱花
    お守りって……
    むかーっ!



   桃
    それよりお前たち
    自分の成績は確認したのか?



   乱花
    おっとそうだった
    お姉ちゃん、見に行こ!



   倫花
    う、うん



   桃
    ふん、呑気なことだ



   乱花
    神楽坂、神楽坂っと
    どこにも名前がないなあ
    ま、まさか脱落とか?



   倫花
    あっ、見つけた!
    乱花ちゃんの名前
    あったよ!



   乱花
    どこどこ?
    うわ! すごいっ!
    私、11位だって!



   倫花
    おめでとう、乱花ちゃん
    いい成績で良かったね~



   乱花
    そうだ
    私が11位ってことは
    お姉ちゃんは?



   乱花
    お姉ちゃんは
    私に勝ったんだもん

    普通に考えれば
    私より上の順位だよね
    神楽坂、神楽坂倫花は~



   倫花
    それがね、5位だって
    自分でも驚いちゃって



   乱花
    200人中5位なんて
    すごいじゃん!
    さすがはお姉ちゃんだな~



   倫花
    えへへ
    今回はたまたまだよ
    でも嬉しいな



   乱花
    九頭竜がお姉ちゃんと
    同じ点数で同率5位か



   倫花
    他の順位は……
    一位は小春ちゃんか
    やっぱりすごいなぁ



   乱花
    あーっ!!



   倫花
    ひゃっ
    びっくりした!
    ど、どうしたの?



   乱花
    猪名川が4位に入ってる!
    なんで?

    月影、ヴァイオラ、満腹丸までは
    納得できるよ、でも猪名川が4位
    なのはおかしくない?

    どうして一緒にパートナーを
    組んでた猪名川が4位で
    私が11位なわけ?



   倫花
    言われてみればそうだね~
    どういう評価の付け方になってるのかな



    乱花
    納得できないよ!
    ゴウザンゼ先生に理由を聞きに行ってくる!



   倫花
    あっ、乱花ちゃん!
    授業が始まるのに!
    ああ、行っちゃった

    しょうがないなぁ、もう



   (自然エリアにて)

   マナ
    どうしてもお願いを
    聞いてもらえないんですか



   ゴウザンゼ
    そう言われてもね……



   マナ
    私だけチャンスがないのは
    平等ではありません



   ゴウザンゼ
    あなたにチャンスが
    与えられなかったわけではないのよ

    小春ちゃんが特別だっただけの話



   マナ
    そんな話はしていません
    平等な扱いを求めているだけです



   ゴウザンゼ
    困りましたわね……



   乱花
    ゴウザンゼせんせーい!
    いますかぁ~?



   マナ
    あら、乱花さん?



   乱花
    げっ、猪名川!
    どうしてここに!?



   マナ
    それはこっちのセリフです
    今は座学の時間のはずでしょう?



   乱花
    それこそこっちのセリフだよ



   ゴウザンゼ
    ふたりとも
    授業をサボったわね?



   乱花
    やべっ



   マナ
    ご、ごめんなさい先生
    でも、どうしても納得できなかったものですから



   ゴウザンゼ
    もう一人、納得いかない人がいるようだけど



   乱花
    あっ、そうだった!
    どうしてペアを組んだ猪名川が
    4位で、私が11位なんですか?

    お姉ちゃんと九頭竜は
    同じ評価で同率5位でした

    私たちは、どうして差がつけられたのか
    それを聞きたくて



   ゴウザンゼ
    単純に勝敗で評価を
    決定しているわけではないのよ

    リブレイターとしての状況判断
    エクスターとしての武器性能
    ペアそれぞれの役割分担……

    ドライヴ時の
    ウイルスの活性状態に至るまで
    全てが評価の対象なの



   乱花
    ウイルスの活性?
    そんなのまで計測してたんだ



   ゴウザンゼ
    乱花ちゃん
    一回戦ではお姉さんと戦うことに
    迷いがありましたね?



   乱花
    ……はい
    それは認めます



   ゴウザンゼ
    お姉さんのことを想うのはいいでしょう

    ですが、そのせいで
    マナちゃんへの配慮が欠けてしまった

    あの時、あなたは
    マナちゃんのために
    戦おうと考えていたかしら?



   乱花
    ……いいえ



   ゴウザンゼ
    マナちゃんには、あなたと
    共に戦う覚悟がありました



   乱花
    そんなの、猪名川はビクニで
    自分が生き残るために戦った
    だけで、私のためじゃ――



   ゴウザンゼ
    そうであっても、その目的の
    ために、彼女はあなたと共に
    戦うことを受け入れたのよ

    あの時、マナちゃんは
    確かに乱花ちゃんのために戦っていたのよ

     ※ 半ば姉と自分のことしか考えていなかった乱花



   乱花
    猪名川が……?



   マナ
    いつも優しいお姉さんと
    一緒にいた乱花さんには
    理解できないかも知れませんね

    もう少し大人になりなさい
    乱花さん



   乱花
    い、猪名川に言われたくないよ!



   ゴウザンゼ
    乱花ちゃんとマナちゃんの
    評価が分かれたのは、そういう理由です

    納得できたかしら



   乱花
    納得できないけど
    理解はした……つもりです



   ゴウザンゼ
    今はそれで十分ですよ

    いずれ、お姉さんのために
    他の誰かとドライヴする日が来るわ

    私たちヴァルキリーは
    二人で一人なのです

    ヴァルキリーは、パートナーが
    いてこそ戦えると言うことを忘れないでね

     ※ カオスルートへの布石。乱花は小春と共に、倫花の為に倫花と戦うことになる



   乱花
    はい
    先生の言葉、胸に刻みます



   ゴウザンゼ
    よろしくてよ



   マナ
    乱花さんのお話は終わったようですね

    では、私の話の続きを



   ゴウザンゼ
    そう言われても困ったわね
    どうしましょう



   乱花
    猪名川は、先生に何の用事があったの?



   マナ
    月影さんの評価です
    あなたも張り出された成績表を見たでしょう



   乱花
    ぶっちぎりの1位だったね



   マナ
    月影さんが、どうやって
    あれほどの成績を上げたか知ってますか?



   乱花
    そう言えば月影は
    誰と組んで……?



   マナ
    倫花さんと桃さん
    ヴァイオラさんと満腹丸さん
    私と乱花さんが組みましたよね?



   乱花
    えーっと、あれ?
    VRクラスの生徒って7人だ!
    一人余っちゃう



   マナ
    はあ
    今頃気付いたんですか



   乱花
    じゃあ月影は誰と組んだの?



   マナ
    一般のVクラスの生徒と組んだそうです
    彼女の順位は8位でした



   乱花
    ふ~ん、一般クラスの子と
    ペアを組んだんだ

    で、それの何が問題なわけ?



   マナ
    話には続きがあります

    定期戦では、全ての対戦相手が
    月影さんとの戦いを棄権したそうです



   乱花
    マジで!?
    月影ってそんなにすごいんだ

    私は月影がドライヴしてる
    ところを見たことないからなぁ

    でも、どうせ負けるなら
    自分の力がどこまで通用するか
    みればいいのにね



   マナ
    で、どうなったと思います?



    乱花
    どうなったって?
    全員に棄権されたらそれで終わりでしょ



   マナ
    それでは評価がつけられないでしょう
    実際に、月影さんはダントツの点数で
    一位の座に収まってるんですよ



   乱花
    あれ、そっか

    ねえ先生
    月影の評価はどうやって採点したんですか?



   ゴウザンゼ
    それがねぇ
    話していいものか悪いものか……



   マナ
    ゴウザンゼ先生が話して
    くださらなくても、私は知っているんです



   ゴウザンゼ
    …………



   乱花
    もったいぶってないで
    さっさと言いなよ、猪名川!



   マナ
    特別試合を行ったんです
    四神との直接対決による採点方式でね



   乱花
    四神との直接対決!?
    なにそれ、聞いてないよ!



   ゴウザンゼ
    極秘に行われましたから
    でもマナちゃん、何故それを知っているの?



   マナ
    ふふん
    副筆頭の立場を利用して
    調べさせてもらいました



   乱花
    おお、スパイみたい!
    かっこいい!



   マナ
    これは明らかな不公平でしょう
    特別扱いです

    ついては、私にも四神と戦って
    評価を上げる機会をいただきたいのです

    今日は、それをお願いにきました



   ゴウザンゼ
    確かに、マナちゃんが
    納得できない気持ちはわかるわ

    機会は平等であるべき



   マナ
    だったら――



   理事長
    ストップ!
    そこまで!
    ちょっといいかしら?



   マナ
    理事長先生!



   ゴウザンゼ
    ちょうどよかったわ
    というか、話を聞いていたんでしょう?



   理事長
    まあね~理事長先生の地獄耳は
    どんな悪口も聞き逃さないんだから



   ゴウザンゼ
    止めにきたのかしら
    でも、それではこの子たちは納得しませんわよ



   理事長
    やめろだなんて言わないわ
    どうせ猪名川さんもあなたも
    聞かないんでしょうし



   ゴウザンゼ
    その通りです
    分かってらっしゃいますこと



   理事長
    ゴウザンゼ先生との対戦を認めます
    だた、ちょっとだけ条件をつけさせて欲しいの



   マナ
    条件ですか?



   理事長
    ゴウザンゼ先生が戦うのは一度きり
    代表して戦うペアを選出するとして
    参加はVRクラスの生徒に限定します



   ゴウザンゼ
    それでは機会の平等が失われます

     ※ 生徒が自分の未来を選択する機会を奪っているというのに



   理事長
    話をあまり大きくしたくないの
    四神の能力は、本当に本当の超極秘
    事項なのよ

    あなたたちの力は、本当に必要に
    なった時まで、できるだけ表には
    出したくないの

     ※ AAAのスパイが入り込んでる可能性を考慮か



   ゴウザンゼ
    それは……
    そうですわね



   理事長
    それに、あなたを相手にして
    戦える生徒なんて、実質的に
    VR-ウイルスの保持者くらいだわ



   ゴウザンゼ
    それは、ふむ……
    そうかも知れません



   理事長
    そもそも、一般クラスに自ら
    すすんで四神と戦いたいなんて
    生徒はいないでしょうし



   ゴウザンゼ
    いないかしら?



   理事長
    いないわねぇ



   ゴウザンゼ
    それも寂しい話ですわね

    仕方がありません
    ビクニの事情も汲んであげなくては

    マナちゃん
    今の条件でどうかしら?



   マナ
    構いません



   ゴウザンゼ
    私に挑戦するペアは
    どう決めましょうか



   理事長
    それは生徒たちに任せましょう
    私たちが決めても、誰かから文句が出るわ

    マナさん、VRクラスから
    ゴウザンゼ先生と戦う代表の
    ペアを選出しなさい

    選出の方法は問いませんが
    あとになっての苦情は一切受け付けません



   マナ
    分かりました



   ゴウザンゼ
    私は誰が相手でも構わなくてよ
    代表のペアが決まったら知らせなさい



   理事長
    それじゃ私はデスクワークに戻るから

    はあ、どうしてこう
    厄介ごとばかり起こるのかしら



   乱花
    すごいじゃん、猪名川!
    理事長とゴウザンゼ先生を
    言い負かすなんて!

    それに、もしかしたら
    ゴウザンゼ先生と戦えるかもしれないのかぁ



   マナ
    まずはVRクラスの全員に
    周知する必要がありますね

    その上で、代表者の選出方法を決めましょう



   乱花
    オッケー
    その辺は猪名川に任せるよ



   マナ
    さて、これから
    忙しくなりそうですね……



   (学園教室にて)

   満腹丸ちゃん
    いただきまーすなのだ!



   マナ
    挨拶に、いただきますは
    おかしいでしょう



   満腹丸ちゃん
    でもでも、ごはんがいっぱい
    あるから来いと言われてやってきたのですが



   マナ
    そう言わなきゃ来ないでしょう



   満腹丸ちゃん
    は?
    んじゃ、ごはんはないのだ?

    ほぎゃーっ!
    だ、騙されたのだ!

    このままでは、食べるつもりで
    分泌した胃液で自ら溶けてしまいます!

    うぐぐ、溶ける……
    溶~け~る~の~だ~



   マナ
    話し合いが終わったら食事でも
    何でもさせてあげますから
    落ち着いてください



   満腹丸ちゃん
    本当なのだ!?
    では話し合いとやらを進めて頂こうなのだ



   マナ
    もうちょっと待ってくださいね
    話は皆さんが揃ってから



   乱花
    猪名川
    みんなを連れてきたよ



   桃
    ゴウザンゼと戦えるというのは
    本当の話なのか?



   マナ
    まあ待って下さい
    月影さんがまだです



   倫花
    それが、小春ちゃんとヴァイオラちゃんにも声を
    かけたんだけど、自分抜きで
    進めてくれて構わないって



   乱花
    ちぇっ
    月影もヴァイオラも余裕こいちゃってさ



   マナ
    では、この場にいる人で
    全員ということですね



   桃
    さっさと決めよう
    誰がゴウザンゼと戦う?



   乱花
    わくわくするね!
    ゴウザンゼ先生と直接やりあえるなんてさ



   満腹丸ちゃん
    しかもポイントもどっさり
    もらえるなんて美味しいのだ



   マナ
    あなたたち、甘く考えすぎじゃありませんか?



   乱花
    別にそんなつもりじゃないけど



   マナ
    月影さんは、一般クラスの生徒を
    パートナーにして、ダイイトク先生と
    引き分けているんです



   乱花
    げっ、マジで!?



   倫花
    先生を相手に引き分けるなんて
    すごいことだよね……



   桃
    にわかには信じられん
    猪名川、確かなのか?



   マナ
    確かな情報です
    恐れをなして権利を放棄するなら今ですよ



   乱花
    誰が放棄するもんか
    月影が引き分けたって言うなら
    私は勝ってやる



   倫花
    そうだね
    一度お手合わせ願いたいよね



   桃
    自分の強さを確かめる
    いい機会だ



   満腹丸ちゃん
    お代わりのチャンスをみすみす
    逃すくらいなら、餓死した方がましなのだ



   マナ
    誰も退く気はなさそうですね



   桃
    代表はどう決める?
    私たちで殺し合うか?



   乱花
    殺し合うのはアレだけどさ
    まあ九頭竜の言う通りだよね
    私たちの中で一番強いヤツでしょ



   マナ
    そうなるんでしょうね



   乱花
    私はお姉ちゃんと組むよ!



   マナ
    私はヴァイオラさんと組みます
    ということは、桃さんと満腹丸さんが
    ペアということになりますけど



   桃
    チャンスが与えられるなら
    私はそれで構わない



   満腹丸ちゃん
    まんぷくまるちゃんも
    それでいいのだ

    ポイント稼いで
    今度こそピーちゃんと宴会をするのだ



   マナ
    では、私が対戦の予定を
    組んで皆さんに伝えます



   (屋内修練場にて)

   ヴァイオラ
    やれやれだわ
    場所は――
    ここでいいはずだけど



   桃
    遅いぞ
    ヴァイオラ



   ヴァイオラ
    主役はいつだって
    最後に登場するものよ

    私が付き合ってあげるのよ
    感謝しなさい

    とはいえ……
    四神への挑戦権というのは
    私に取っても魅力的だわ

    そいつらを蹴散らせばいいのね?



   マナ
    そうです



   ヴァイオラ
    私がリブレイターをやるわ
    定期戦ではパートナーに任せて
    痛い目を見たから



   満腹丸ちゃん
    う……



   九頭竜
    心理作戦だ
    気にするな

    こっちは私がリブレイターをやる
    いいな?



   満腹丸ちゃん
    あー、うん
    ピーちゃんにお任せするのだ



   桃
    ……満腹丸?



   ヴァイオラ
    では始めましょうか

    格の違いというものを
    見せてあげるわ




  8-A-後

   桃
    ぐ……
    ううっ……



   ヴァイオラ
    大きな口を叩いていた割に
    手応えのない事ね



   マナ

    (独白開始)

    ああ、気持ちいい……
    この身体の中を流れていくものはなに?

    そうかこれが……
    これが本当の私……
    私の力……

    (独白終了)

    やっと目覚めてくれた……

    やっぱりヴァイオラさんは強い……
    私までをも高みに引き上げてくれる

    桃さんのようなクズから
    ヴァイオラさんに乗り換えて
    本当に正解でしたね

    これならゴウザンゼ先生にだって……
    うふふ、あははははははは!!

     ※ ウイルスによって攻撃的な性格となっている
       ヴァイオラとのドライヴによって、更にそれが顕著になっているのかもしれない

     ※ ドライヴした相手の想いを共有し影響を受けるという仮定が事実なら、
       マナが攻撃的な性格になり、桃や乱花が献身的になっていった事にも説明がつく




   桃
    猪名川、お前……?



   マナ
    それにしても、こうもうまく行くなんて
    思いもしなかったけれど



   ヴァイオラ
    私はそんな小細工
    必要ないって言ったんだけどね



   桃
    小細工だと?
    何の話だ?



   満腹丸ちゃん
    あのあのっ
    ごはんはまだですか?



   マナ
    ああ、そういう約束でしたね



   桃
    ……どういうことだ



   満腹丸ちゃん
    対戦が終わったら、ごはんを
    おごってもらう約束だったのだ

    だから早く対戦を
    終わらせたかったのだ



   桃
    それで戦いの最中に
    集中していなかったのか……

    猪名川、貴様……
    汚いマネを!



   マナ
    戦場に立つ前から
    戦いは始まっているんです



   満腹丸ちゃん
    ピーちゃん
    何を怒ってるのだ
    一緒にごはん食べよう?



   桃
    くそっ
    まんまとしてやられた……



   乱花
    満腹丸のバカ!
    なんで簡単に騙されるのさ!



   満腹丸ちゃん
    え、らんちゃんも怒ってる
    よくわからないのだ

    ごはんをおごってもらえるなら
    代表になってもならなくても
    同じって言われたから……



   乱花
    同じじゃないでしょ!?
    全然違うよ!!



   桃
    いいんだ
    満腹丸を責めるな
    私が甘かったんだ

    満腹丸の性格を考えれば
    予測して然るべきだった



   乱花
    でも、こんなのはあんまりだよ!
    猪名川だって、こんな手で勝って嬉しいの?



   マナ
    おかしなことを言いますね
    嬉しいに決まってるでしょう
    勝つためにここにいるんです



   ヴァイオラ
    マナの言う通りよ
    勝ってこその勝負

    そして負け犬の遠吠えほど
    見苦しいものはないわ



   桃
    私が……負け犬だと?



   ヴァイオラ
    神楽坂倫花は少しはやると
    聞いていたけれど、妹の様子を見たら
    そうでもなさそうね

    満腹丸と同じように
    何も分かってないバカなら
    負ける要素はないかしら



   桃
    おい、口を慎め

    私は何を言われても構わない
    だが、倫花や満腹丸のことを
    バカにするのは許さない



   乱花
    九頭竜……



   桃
    そこにいる乱花だって
    確かにバカかも知れない
    いやバカなのは確かだ



   乱花
    え、ちょっと九頭竜?



   桃
    だが、他人を見下して
    利用しようとしか考えない
    貴様らよりはマシだ!



   ヴァイオラ
    負け犬ほど
    キャンキャン
    よく吠える……

    私に話を聞かせたかったら
    勝ってから言うことね

    挑戦なら何度でも
    受けてあげるわ



   桃
    ……その言葉、忘れるな



   ヴァイオラ
    では失礼するわ
    次は少しは楽しめるカードを
    組みなさい、マナ



   マナ
    はっ、はい
    ヴァイオラさん

    では
    せいぜいお大事にね



   乱花
    だ、大丈夫?!
    九頭竜!



   満腹丸ちゃん
    あのう~
    ……まんぷくまるちゃんは
    またやってしまいましたか?



   桃
    気にするな
    お前のせいじゃない

    (独白開始)

    自分以外の誰かのために
    これほど気が昂るなんて
    私らしくない……

    このままでは終わらせない
    終わらせてはいけないんだ

    (独白終了)




  8-B-前

   桃
    頼む、倫花
    この通りだ!
    私と組んでくれ!



   倫花
    話は聞いたよ
    満腹丸ちゃんもショックだったみたい

    私もどうにかしてあげたいけど……
    ちらっ



   乱花
    ダメダメ!
    そんなのダメだよ!
    九頭竜の気持ちは分かるけどさ

    お姉ちゃんと組むのは
    私なんだから!



   桃
    そこを曲げて頼む

    あいつらは満腹丸の気持ちを
    踏みにじるような真似をした

    それどころか
    お前たちまでバカにした

    それもこれも、私が負けたからだ
    勝っていればヴァイオラも
    猪名川も何も言えなかっただろう



   乱花
    ん~、私だってムカついてる
    気持ちは九頭竜と同じだよ

    でも、それとこれは話が違うっていうか……



   倫花
    私は、乱花ちゃんさえよければ
    桃ちゃんと組むのは構わないよ



   乱花
    そうだよね
    お姉ちゃんはそう言うよね



   桃
    すまない
    お前が渋るのも理解できる

    だが申し込まずにはいられなかったんだ
    ダメなら断ってくれ



   乱花

    (独白開始)

    そうだよ、九頭竜の言う通り
    ビシっと断ればいいんだよ

    なのに心がチクチクするのは
    なんでだろ……

    (独白終了)

    (回想開始)

   ゴウザンゼ
    いずれ、お姉さんのために他の
    誰かとドライヴする日が来るわ

    私たちヴァルキリーは
    二人で一人なのです

    ヴァルキリーは、パートナーが
    いてこそ戦えるということを
    忘れないでね

    (回想終了)

   乱花
    ……わかってるよ、先生
    ちくちくするのは、胸に刻んだ
    先生の言葉なんだ

    誰かのためにドライヴすることも
    誰かのためにドライヴしないってことも
    同じだもんね



   倫花
    乱花ちゃん……?



   乱花
    一回だけだよ



   桃
    ……いいのか?



   乱花
    ホント、一回だけだからね



   倫花
    乱花ちゃん!!
    ありがとう!


   桃
    礼を言う
    乱花



   乱花
    ああもう、そういうのは
    勝ってからでいいから!

    (独白開始)

    ゴウザンゼ先生
    これでいいんだよね

    私、少しは大人に
    なれたかな……

    (独白終了)

     ※ 理事長の思惑通り。ヴァルキリーとしての成長も促進させた



   ヴァイオラ
    これはどういうことかしら
    叩き潰したはずのザコがいるようだけど



   桃
    …………



   マナ
    どういうことですか?
    今日の対戦は、倫花さんと
    乱花さんのペアのはず

    説明を求めます



   乱花
    ごめんごめん
    ちょっとおなか壊しちゃってさ
    九頭竜は私の代役ってことで



   マナ
    倫花さんも了解して
    いるんですか?



   倫花
    もちろん
    代役がダメってルールは
    なかったはずだよね?



   ヴァイオラ
    そのザコは、一度ならず私に
    負けているのよ?

    そっちのアホの妹の方が
    まだしも可能性があると思うんだけど



   乱花
    こらーっ!
    誰がアホだ!



   ヴァイオラ
    そっちの中で話がついてるなら
    構わないけどね

    ザコABが、ザコACに
    なっただけの話だし



   倫花
    マナちゃん
    勝ち負けより大事な事ってあると思うんだ



   マナ
    そうですね



   倫花
    マナちゃんが満腹丸ちゃんに
    したことは、やっぱりやっちゃいけないことだよ



   マナ
    そう思います



   桃
    ……猪名川



   マナ
    けれど
    それを語っていいのは勝者だけなんです

    それが理解できないなんて
    愚かとしか言いようがありません



   倫花
    マナちゃん
    それは違うよ



   マナ
    勝ってから喋りなさいと
    そう言ってるんです

     ※ 信頼出来るパートナーと心を開いた桃が側にいる倫花に、
       マナの置かれた状況は見えていない




   桃
    倫花
    リブレイターを任せる

    感情を抑えられそうにない
    だが憎しみで刃を振るうべき
    ではないのも分かってる


   倫花
    そうだね
    私がやるよ



   ヴァイオラ
    話は終わった?
    まさか降参の相談をしてた
    なんて言わないわよね



   倫花
    勝ち負けなんて
    どうでもいいんだけど

    勝たなきゃマナちゃんや
    ヴァイオラちゃんとお話できないって
    言うなら勝つしかないよね



   ヴァイオラ
    本気で言ってるの?
    それともやっぱりおバカなの?



   倫花
    本気だよ



   ヴァイオラ
    マナ、あなたに任せるわ
    1分で終わらせなさい

    あそこまで好き放題言われて
    まさか負けるなんて
    あり得ないわよね?



   マナ
    は、はい



   倫花
    行くよ
    桃ちゃん



   桃
    ああ


 


  8-B-後

   ヴァイオラ
    ……本当に最近
    ロクなことがないわ

    小春は私の方を見向きもしないし
    近くに寄ってくるのはアホにザコに
    おバカばかり

    反省しなければね
    観察を怠るべきではなかった



   マナ
    ヴァ、ヴァイオラさん
    私は……



   ヴァイオラ
    マナ、あなたのせいではないわ
    あなたは十分役に立ったし
    この先も役に立ってもらわなくては

    それに、ちょっと面白いものも
    見ることができたことだし……

    これで終わりではないんでしょう?
    マナ、きちんと後始末をつけなさいな



   マナ
    は、はい



   ヴァイオラ
    私の出番はここまでね

    神楽坂倫花と、九頭竜桃……
    そしてアホの妹

    覚えておいてあげるわ
    じゃあね



   乱花
    アドレス帳に神楽坂乱花と
    追加しておきなさいよね!

    誰がアホの妹だっつの
    もうっ



   倫花
    ちょっとは分かってもらえたのかな
    ヴァイオラちゃんに



   桃
    少なくとも無視できない
    くらいには近づけたらしい

    猪名川
    お前はどうなんだ?



   マナ
    私は負けていません
    今回はヴァイオラさんが手を抜いたからです

     ※ どう見ても責任転嫁にしか見えないが、
       桃が神楽坂姉妹達と上手くやっているのを見て、
       動揺していた可能性もある。それが後に明らかとなる




   桃
    ……だそうだが



   乱花
    なるほどね
    負け犬の遠吠えってのは
    こういう風に聞こえるんだ



   倫花
    乱花ちゃん
    そんなこと言っちゃダメだよ

   一番ショックを受けてるのは
    マナちゃんなんだから



   マナ
    ……くっ



   乱花
    お姉ちゃんが一番酷いよ……



   マナ
    では話を進めましょうか
    ヴァイオラさんにも言われたことですし



   倫花
    何の話?



   マナ
    忘れたんですか?
    これはゴウザンゼ先生への
    挑戦権を懸けた戦いです



   倫花
    ああ!



   乱花
    おお!



   桃
    そう言えばそうだったな



   マナ
    こんな人たちに負けたなんて
    自分が情けなくなります……

    でも約束は約束ですから

    私が責任を持ってゴウザンゼ
    先生との対戦をセッティングします



   乱花
    あの~、それはやっぱり
    お姉ちゃんと私じゃなくて
    お姉ちゃんと九頭竜だよね?



   マナ
    それはそうでしょう

    そうでなければ私も
    ヴァイオラさんだって納得できません



   乱花
    やっぱり九頭竜に
    お姉ちゃんのパートナーを
    譲るんじゃなかった!

    失敗したな~
    私も先生と戦いたかったな~
    ポイントも惜しかったよ~

    ねえ九頭竜~
    もし九頭竜が先生に勝ったら
    ポイント、半分くれない?



   桃
    乱花……
    何て言うかお前はすごく残念だな



   乱花
    そう!
    私の残念な気持ち分かってくれる?



   桃
    本当に残念だ



   倫花
    あははは……




  8-C-前

   (港湾区にて)


   ゴウザンゼ
    開始5分前に着くとはいい心がけね
    ちゃんと休息と補給はできたかしら?



   倫花
    はい
    お気遣いありがとうございます
    気力も体力も十分です!



   桃
    勢い余って殺してしまったら
    その時はすまん



   ゴウザンゼ
    二人とも元気ね
    ええ、それでよろしくてよ
    私も本気を出します



   桃
    ……ヴァイオラが来ているな



   倫花
    えっ、どこに?



   桃
    猪名川も一緒だろう
    気配を感じる

    高みの見物のつもりだろうが
    気にすることはない



   倫花
    そうだね
    せいいっぱいやるだけだもんね



   桃
    倫花
    私がリブレイターになってもいいか?



   倫花
    ……理由を聞いてもいい?



   桃
    私は知りたい

    乱花や満腹丸
    それに倫花がどれほどの
    力を私にくれたのか

    倫花、お前のために
    どこまで強くなれるのか
    私は知りたい



   倫花
    あはっ
    そんな風に言われたら断れないでしょ



   桃
    す、すまない



   倫花
    いいよ、桃ちゃん
    私を好きなように使って

    桃ちゃんのこと信じてるから



   ゴウザンゼ
    全力でぶつかってきなさい
    全力でねじ伏せてあげます!



   桃
    力を……
    力をくれ!
    倫花っ!




  8-C-後

   ゴウザンゼ
    お見事でした
    まさか私の装甲を砕くとは……
    褒めて差し上げます

    九頭竜桃それに神楽坂倫花
    両名を合格とし、相応の評価と
    ビクニポイントを与えます



   桃
    ゴウザンゼ……先生……
    ありがとうございました



   ゴウザンゼ
    次はダイイトクさんとですね
    あの方は私のように優しくはありませんよ



   桃
    それではまるで
    ゴウザンゼ先生が
    優しいみたいに聞こえる

    悪い冗談だ



   ゴウザンゼ
    ほほほほほほっ



   倫花
    桃ちゃん
    私たち勝ったんだね!



   桃
    倫花……
    その、ありがとう



   倫花
    こちらこそ
    ありがとう、桃ちゃん



   桃
    お、おい
    倫花?



   乱花
    お姉ちゃん!!

    お姉ちゃん……?

    お、お姉ちゃんっ!

    ……どいて!

    お姉ちゃん! お姉ちゃん!
    どうしたの!? 起きて!
    ねぇ、起きてよぉ!



   倫花
    はぁ……はぁ……
    これくらい大丈夫よ
    心配しないで、乱花ちゃん



   乱花
    全然大丈夫じゃないじゃない!



   桃
    倫花!
    どうしたしっかりしろ!

    ゴウザンゼ先生!



   ゴウザンゼ
    VR-ウイルスの
    活性化による一時的な副作用でしょう
    ただ酷く消耗しているようです

    ああ、それほどまでに
    パートナーのために力を
    振り絞ったのですね……




   倫花
    あはは
    みんな、大げさだなぁ

    あれっ
    乱花ちゃんの顔が
    よく見え……ない……



   乱花
    お姉ちゃん目を開けて!
    起きて、起きてよ!
    そんなのいやだよっ!

    ほらっ!
    ここにいるよ!
    解るよね!解るよね!

    解ったんなら返事をしてよ!
    お姉ちゃん!



   桃
    すまなかった
    私がもっと早く倫花の
    異変に気付いていれば……



   乱花
    返してよ!

    お姉ちゃんの笑顔を返してよ!
    お姉ちゃんの声を返してよ!
    お姉ちゃんの温もりを返してよっ!

    いますぐ返してよっ!



   小春
    二人とも、落ち着きなさい
    倫花さんは疲れて眠っている
    だけです



   乱花
    月影!!
    どうしてここに?



   小春
    どうしてだっていいでしょう
    救護班をここへ誘導します

    今は救護班に任せるべきです



   乱花
    任せろって言われても
    任せられる訳ないでしょ!?
    私もついて行くよ!



   小春
    あなたがいても
    何の役にも立ちません
    医療行為の邪魔になるだけでしょう



   乱花
    でもっ
    でもお姉ちゃんが!



   小春
    応急処置が済んだら
    すぐに面会ができるようにします

    そうしたら彼女についていてあげて

    あなたの笑顔を見れば
    倫花さんもきっと元気が出ます



   乱花
    ……うん、わかった



   桃
    月影
    お前のおかげで助かった
    礼を言う



   小春
    それには及びません
    仲間を助けるのは当然のことですから

    倫花さんもあなたたちも
    脱落なんてさせません

    神楽坂倫花……
    特にあなたには……

     ※ 小春がパートナーに求める理想像、献身と想いの強さ




 

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